
「目から鼻へ抜ける」ということわざを聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
「あの人は目から鼻へ抜けるね」なんて褒め言葉として使われることがありますが、正確な意味は?と聞かれると、ちょっと迷ってしまいますよね。
目と鼻が何か関係あるの?それとも何か深い由来があるのでしょうか。
この記事では、「目から鼻へ抜ける」の意味や由来、実際の使い方がわかる例文、さらには類語や対義語、英語表現まで網羅的に解説していきます。
ビジネスシーンでも日常会話でも使える表現力が身につきますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
「目から鼻へ抜ける」を理解するための基礎知識

読み方
「目から鼻へ抜ける」は、「めからはなへぬける」と読みます。
シンプルな読み方ですので、特に読み間違いは少ないでしょう。
「めからはなにぬける」と「へ」を「に」と間違えることがあるかもしれませんが、正式には「へ」を用いることが一般的です。
意味
「目から鼻へ抜ける」とは、頭の回転が非常に速く、物事の判断が素早く、抜け目のない様子を表すことわざです。
単に「頭が良い」というだけでなく、以下のような複合的な意味を持っています。
- 判断が速い:状況をすばやく理解して、的確な行動ができる
- 機転が利く:とっさの対応が上手で、臨機応変に動ける
- 抜け目がない:細かいところまで気が回り、チャンスを逃さない
- 利発で聡明:知的で理解力が優れている
つまり、知能だけでなく実務的な能力も兼ね備えた、非常に優秀な人物を褒める際に使われる表現なのです。
「あの新人は目から鼻へ抜けるタイプだ」と言われたら、それは最高の褒め言葉と受け取ってよいでしょう。
語源と由来
「目から鼻へ抜ける」の語源については、実は複数の説が存在します。
最も信憑性が高いとされる説は、目と鼻の解剖学的な位置関係に由来するというものです。
目と鼻は顔の中で非常に近い位置にあり、体内でも涙管(るいかん)という管でつながっています。
実際に目薬をさすと、成分が涙管を通って鼻の奥に流れ、喉の方に感じることがありますよね。
目から入ったものが鼻へすぐに抜けるほど距離が近いことから、物事を理解するのが非常に早いことの比喩として使われるようになったとされています。
一方、上方落語『鹿政談』に登場する逸話も有名です。
この落語では「大仏の目から落ちた人が鼻の穴へ抜けた」という話が語られますが、これは後付けの笑い話と考えられており、語源としての信憑性は低いとされています。
むしろ、すでに存在していたことわざに面白いエピソードを結びつけたものと言われているんですね。
医学的な観点からも興味深い事実があります。
眼科医の解説によれば、目と鼻は涙管という「鼻涙管(びるいかん)」でつながっており、涙は通常この管を通って鼻腔へ排出されます。
悲しくて泣いたときに鼻水も出るのは、この仕組みのためなんです。
このような解剖学的な構造が、ことわざの背景にある実感として日本人の間で共有されていたのかもしれませんね。
「使い方」がわかる「例文」3選

1:「新入社員の田中さんは目から鼻へ抜けるタイプで、一度説明しただけですぐに業務を覚えてしまう」
この例文は、ビジネスシーンで新人の優秀さを褒める場合の使い方です。
「目から鼻へ抜ける」は仕事の飲み込みが早い人、物覚えが良い人を評価する際によく使われます。
上司や先輩が部下や後輩について話すときに、「あの子は本当に目から鼻へ抜けるね」と表現することで、単なる真面目さではなく、理解力と実行力を兼ね備えた人材であることを伝えられます。
就職活動や人材評価の場面でも役立つ表現ですね。
2:「彼女は目から鼻へ抜けるような賢さで、交渉相手の本音を見抜いてしまう」
この例文は、対人関係における洞察力の高さを表現しています。
「目から鼻へ抜ける」には「抜け目がない」というニュアンスも含まれるため、相手の意図を素早く察知できる能力を指すこともあります。
ビジネス交渉や営業の場面では、相手の言葉の裏にある本音を読み取る力が重要ですよね。
そういった状況判断の速さや鋭さを褒める際にも、このことわざが使えます。
ただし、使い方によっては「計算高い」というネガティブな印象を与える可能性もあるので、文脈には注意が必要です。
3:「息子はまだ5歳なのに目から鼻へ抜けるような子で、大人の会話もよく理解している」
この例文は、年齢に対して理解力が高い子どもを表現する場合の使い方です。
「目から鼻へ抜ける」は子どもの聡明さを褒めるときにもよく使われます。
親や教師が「あの子は目から鼻へ抜けるね」と言うとき、それは単に勉強ができるというだけでなく、物事の本質を理解する力や、状況に応じた行動ができる賢さを評価しているのです。
ただし、子どもの場合は「ませている」「計算高い」といったネガティブな意味合いで受け取られることもあるので、褒め言葉として使う際は温かみのある文脈で使うとよいでしょう。
似た意味の「ことわざ」は?「類語」「言い換え」表現
一を聞いて十を知る
「一を聞いて十を知る」は、少しの情報から全体を理解できる優れた理解力を表すことわざです。
孔子の弟子である顔回の逸話に由来するとされており、中国の古典に登場する表現ですね。
「目から鼻へ抜ける」との共通点は、物事を素早く理解する能力の高さを褒めている点です。
ただし、微妙なニュアンスの違いもあります。
「一を聞いて十を知る」は純粋に理解力や推察力の高さを強調するのに対し、「目から鼻へ抜ける」は理解力に加えて「機転が利く」「抜け目がない」といった実務的な能力も含んでいます。
ビジネスシーンで使い分けるなら、学習能力の高さを褒めるときは「一を聞いて十を知る」、総合的な仕事の能力を評価するときは「目から鼻へ抜ける」という使い分けができますね。
明敏(めいびん)
「明敏」は、頭の働きが鋭く、理解が早いことを表す四字熟語です。
ことわざではなく漢語表現ですが、「目から鼻へ抜ける」と非常に近い意味を持っています。
「彼は明敏な人物だ」という使い方をすると、知的で判断力に優れているというニュアンスが伝わります。
「目から鼻へ抜ける」が日常会話で使いやすい親しみやすい表現であるのに対し、「明敏」はやや格式ばった文章や改まった場面で使われることが多いですね。
履歴書や推薦状などで人物評価を書く際には、「明敏な判断力を持つ」といった表現が適しているでしょう。
抜け目がない
「抜け目がない」は、油断や隙がなく、細かいところまで注意が行き届いていることを表す慣用句です。
「目から鼻へ抜ける」に含まれる意味の一つである「抜け目のなさ」を、より直接的に表現したものですね。
「あの営業マンは抜け目がない」と言うとき、それはチャンスを逃さず、細部まで気を配る優秀さを意味します。
ただし、「抜け目がない」には場合によって「計算高い」「したたか」といったネガティブな印象を与えることもあります。
一方、「目から鼻へ抜ける」は基本的に純粋な褒め言葉として受け取られることが多いという違いがあります。
文脈や相手との関係性を考えて使い分けるとよいでしょう。
利発(りはつ)
「利発」は、頭の働きが良く、理解が早いことを表す言葉です。
特に子どもや若い人に対して使われることが多く、「利発な子ども」という表現はよく耳にしますね。
「目から鼻へ抜ける」との共通点は、知的な素早さと賢さを褒めている点です。
ただし、「利発」は比較的柔らかく優しい印象の言葉で、主に年少者に対して使われるのに対し、「目から鼻へ抜ける」は年齢を問わず、またより具体的な能力の高さを表現できるという違いがあります。
「対義語」は?
目から耳へ抜ける
「目から耳へ抜ける」は、見たことが理解できず、身につかないことを意味することわざです。
「目から鼻へ抜ける」が理解の早さを褒める表現であるのに対し、「目から耳へ抜ける」は理解力の乏しさや物覚えの悪さを表す対義語です。
目と鼻は近い位置にあるのに対し、目と耳は離れた位置にあることから、理解するまでに時間がかかる、あるいは理解できないことを比喩しているんですね。
「彼は説明を聞いても目から耳へ抜けるようで、なかなか覚えられない」といった使い方をします。
ただし、この表現は相手を批判するニュアンスが強いので、実際に使う際には配慮が必要でしょう。
鈍(にぶ)い
「鈍い」は、反応が遅い、理解が遅いことを表す形容詞です。
「目から鼻へ抜ける」が素早い判断力を意味するのに対し、「鈍い」はその正反対の遅さや鈍感さを表します。
「彼は勘が鈍い」「理解が鈍い」といった使い方をしますね。
ビジネスシーンでは「あの人は目から鼻へ抜けるタイプではなく、少し鈍いところがある」といった対比的な表現で使われることもあります。
ただし、人を直接「鈍い」と評価するのは失礼にあたる場合が多いので、使う場面には十分な注意が必要です。
とんちんかん
「とんちんかん」は、見当違いなことや的外れなことを表す言葉です。
「目から鼻へ抜ける」が的確な判断力を意味するのに対し、「とんちんかん」は判断が的外れで、状況を正しく理解できていないことを意味します。
「とんちんかんな回答をする」「とんちんかんな行動」といった使い方をしますね。
語源は鍛冶屋の師匠と弟子の槌音が合わないことから来ているとされており、「調子が合わない」「ちぐはぐ」というニュアンスも含んでいます。
「目から鼻へ抜ける」ような人物とは真逆のタイプを表現する際に使える対義的な表現と言えるでしょう。
「英語」で言うと?
Sharp as a tack(画鋲のように鋭い)
"Sharp as a tack"は、直訳すると「画鋲のように鋭い」という意味です。
画鋲(tack)の先端が鋭いことから、頭脳が鋭く、理解力が優れていることを表す英語の慣用表現です。
"She's sharp as a tack."(彼女は頭の回転が速い)といった使い方をします。
「目から鼻へ抜ける」と同様に、知的な素早さや鋭い判断力を褒める表現として、アメリカ英語でよく使われていますね。
日常会話でもビジネスシーンでも使える便利なフレーズです。
Quick-witted(機転が利く)
"Quick-witted"は、「機転が利く」「頭の回転が速い」という意味の形容詞です。
"Quick"(速い)と"wit"(知恵、機転)を組み合わせた言葉で、とっさの状況でも素早く適切な判断ができる能力を表します。
"He's very quick-witted and always knows what to say."(彼は非常に機転が利き、いつも適切な発言ができる)といった使い方をします。
「目から鼻へ抜ける」の持つ「機転が利く」というニュアンスを最もよく表現している英語表現と言えるでしょう。
ビジネスの場面で誰かの能力を評価する際にも使える表現です。
On the ball(機敏で有能な)
"On the ball"は、直訳すると「ボールの上に」という意味ですが、慣用的には「機敏で有能な」「状況をよく把握している」という意味で使われます。
スポーツでボールに集中している状態から来ている表現とされていますね。
"The new employee is really on the ball."(その新入社員は本当に優秀だ)といった使い方をします。
仕事が速く、状況判断が的確で、抜け目がないという「目から鼻へ抜ける」の複合的な意味合いをよく表現している英語表現です。
ビジネス英語として非常によく使われるフレーズなので、覚えておくと便利ですよ。
まとめ
「目から鼻へ抜ける」は、頭の回転が速く、判断が的確で、機転が利く優秀な人物を表す日本の伝統的なことわざです。
その語源は目と鼻の解剖学的な近さに由来し、物事を素早く理解する能力の高さを比喩しています。
このことわざの魅力は、単なる知能の高さだけでなく、実務能力や状況判断力、機転の良さまで含めた総合的な優秀さを一言で表現できる点にあります。
ビジネスシーンでは部下や同僚の優れた能力を評価する際に、日常会話では子どもの聡明さを褒める際になど、幅広い場面で活用できる表現です。
類語である「一を聞いて十を知る」「明敏」「利発」などと使い分けることで、より繊細なニュアンスも伝えられるでしょう。
また、英語では"Sharp as a tack"や"Quick-witted"、"On the ball"といった表現が対応します。
人を褒める言葉は、使う側の教養も表します。
「目から鼻へ抜ける」という美しい日本語の慣用句を、ぜひ日常会話やビジネスの場面で使ってみてください。
相手への敬意と評価を伝える素晴らしい表現として、きっと役立つはずですよ。