
「鬼の霍乱」ということわざ、聞いたことはあるけれど、正確な意味は?と聞かれると少し戸惑ってしまう方も多いのではないでしょうか。
「鬼」と「霍乱」という、なんだか物々しい言葉の組み合わせですが、実は日常生活でも使える面白い表現なんです。
この記事では、「鬼の霍乱」の意味や由来はもちろん、実際の使い方がわかる例文、似た表現の類語、反対の意味を持つ対義語、さらには英語での表現まで、網羅的にわかりやすく解説していきます。
最後まで読めば、あなたもこのことわざを自信を持って使えるようになりますよ!
「鬼の霍乱」を理解するための基礎知識

まずは、「鬼の霍乱」という言葉の基本的な情報から見ていきましょう。
読み方
「鬼の霍乱」は「おにのかくらん」と読みます。
「霍乱」という言葉は現代ではあまり使われないため、読み方がわからない方もいらっしゃるかもしれません。「かくらん」としっかり覚えておきましょう。
意味
「鬼の霍乱」とは、普段とても健康で頑丈な人が珍しく病気になることを、冷やかし半分で表現する言葉です。
「あんなに元気な人が病気になるなんて珍しい」「いつも健康自慢しているのに、まさか風邪をひくなんて」といったシチュエーションで使われます。
ポイントは、「冷やかし半分」という部分です。本当に心配しているというよりも、「珍しいこともあるものだ」というニュアンスで使われることが多いんですね。
決して悪意を持って使う言葉ではありませんが、相手との関係性や状況を考えて使うことが大切です。
語源と由来
「鬼の霍乱」の由来を理解するには、まず「霍乱」という言葉について知る必要があります。
「霍乱」とは、平安時代から存在する古い医学用語で、激しい下痢や嘔吐を伴う急性胃腸炎や食中毒のことを指します。主に夏場に発症することが多い病気でした。
この「霍」という文字は、中国の中医学に由来し、「突然」という意味を持っています。雨が降ると鳥が突然飛び立つような、急激な胃腸の乱れを表現した言葉なんです。
平安時代の文献『病草子』には、「口より水をはき尻より痢をもらす」という生々しい記述があり、その苦しみは「鬼のように苦しい」ものだったと言われています。
現代医学では、細菌性食中毒やコレラに相当する病気だったとされています。抗生物質のない時代、霍乱は命に関わる恐ろしい病気でした。
では、なぜ「鬼の」が付いたのでしょうか?
実は、ここには二つの意味が込められています。
一つ目は、病気の症状が「鬼のように激しく苦しい」ことから来ています。
二つ目は、「鬼ほど強くて病気にならないような人でも、霍乱にはかかってしまう」という意味です。霍乱は感染症なので、どんなに健康で頑丈な人でも突然発症してしまうものでした。
江戸時代後期の川柳に「鬼の霍乱しよ きさんで治り」という作品があり、ここからことわざとして広まっていったとされています。
ちなみに、鎌倉時代の北条義時が「脚気に霍乱を合併した」ことで亡くなったという記録もあり、歴史的にも「鬼の霍乱」の激しさを象徴する出来事として語られています。
また、日本の文化では、鬼は疫病の象徴(瘟鬼・疫鬼)とも結びついていました。鬼祓い(オニヤライ)という行事も、疫病退散のための儀式だったんですね。
「使い方」がわかる「例文」3選

それでは、実際に「鬼の霍乱」をどのように使うのか、具体的な例文で見ていきましょう。
1:「課長が風邪で休むなんて、鬼の霍乱だね」
これは職場でよく使われるパターンです。
いつも元気で、体調不良で休んだことがないような上司や同僚が珍しく体調を崩したときに使います。「あの元気な課長が休むなんて珍しい」という驚きと、ちょっとした冷やかしのニュアンスが込められています。
ただし、本人に面と向かって言うのは避けたほうが無難です。本人は本当に辛い思いをしているかもしれませんからね。同僚同士の会話で「珍しいね」という意味で使うのが適切でしょう。
2:「あの健康オタクの兄が食中毒になるなんて、まさに鬼の霍乱だ」
これは家族や親しい友人関係で使う例文です。
普段から健康管理に気を使っていて、「私は絶対に病気にならない」と自信満々な人が病気になったときに、「そんなこともあるんだね」という意味で使います。
興味深いのは、ここでの「食中毒」という表現です。現代では「霍乱」という病名は使われませんが、急性胃腸炎や食中毒がまさに「霍乱」に相当するんですね。
このように、元々の語源である「霍乱」に関連する病気で使うと、ことわざの本来の意味により近い使い方になります。
3:「毎日ジョギングしている田中さんが入院?鬼の霍乱だよ」
これは近所の知り合いや友人関係での会話例です。
スポーツマンで健康そのものといった人が、突然病気になったときに使います。「あんなに健康的な生活をしている人でも病気になることがあるんだ」という驚きが表現されています。
この例文のポイントは、「入院」という重めの状況でも使えるということです。風邪のような軽い病気から、入院を要するような状況まで、幅広く使える表現なんですね。
ただし、繰り返しになりますが、本当に深刻な病気の場合は、冗談めかした表現よりも真摯な心配の言葉をかけるべきでしょう。場面と相手との関係性を考えて使い分けることが大切です。
似た意味の「ことわざ」は?「類語」「言い換え」表現
「鬼の霍乱」と似た意味を持つことわざや表現を見ていきましょう。
猿も木から落ちる
「猿も木から落ちる」は、「その道の達人でも時には失敗することがある」という意味のことわざです。
「鬼の霍乱」との共通点は、「普段はそんなことがない人に、珍しいことが起こる」という点です。
ただし、微妙なニュアンスの違いがあります。「猿も木から落ちる」は主に「失敗」に焦点を当てた表現で、技術や能力に関する話題で使われます。一方、「鬼の霍乱」は「病気」という不可抗力な出来事に使われる点が異なります。
例えば、「あのベテラン職人でも失敗することがあるんだね」という場面では「猿も木から落ちる」が適切で、「あの健康な人が病気になった」という場面では「鬼の霍乱」が適切です。
弘法にも筆の誤り
「弘法にも筆の誤り」は、書の達人である弘法大師(空海)でさえ書き損じることがあるという意味で、「名人でも時には失敗する」ことを表します。
これも「鬼の霍乱」と同じく、「普段はそんなことがない人に珍しいことが起こる」という構造を持っています。
違いとしては、「弘法にも筆の誤り」は「うっかりミス」や「わずかな失敗」のニュアンスが強く、比較的軽い失敗に使われます。「鬼の霍乱」は病気という本人にはどうしようもない出来事なので、責任を問う意味合いはありません。
河童の川流れ
「河童の川流れ」は、泳ぎの名人である河童でさえ川に流されることがあるという意味で、「得意なことでも油断すると失敗する」ことを表します。
これも「名人や達人でも失敗する」という点では「鬼の霍乱」と似ていますが、「油断」や「慢心」による失敗というニュアンスが含まれている点が異なります。
「鬼の霍乱」は本人に落ち度があるわけではなく、純粋に「珍しいことが起こった」という驚きを表現する言葉です。
意外千万
四字熟語の「意外千万」も類語として挙げられます。
これは「非常に意外である、思いがけない」という意味で、予想外の出来事を表現する言葉です。
「鬼の霍乱」も予想外の出来事(健康な人が病気になる)を表すという点で共通していますが、「意外千万」は病気に限らず、あらゆる予想外の出来事に使える汎用性の高い表現です。
「鬼の霍乱」は健康な人が病気になるという特定のシチュエーションに特化した表現なので、より具体的で印象的な言い回しと言えるでしょう。
「対義語」は?
次に、「鬼の霍乱」と反対の意味を持つことわざや表現を見ていきましょう。
病は気から
「病は気から」は、「病気は気の持ちようで良くも悪くもなる」という意味のことわざです。
「鬼の霍乱」は「健康な人が病気になる」という事実を述べる表現ですが、「病は気から」は「心の状態が体に影響する」という因果関係を示す表現です。
つまり、「鬼の霍乱」が「予想外に病気になった」という驚きを表すのに対し、「病は気から」は「気の持ちよう次第で病気にもならないし、回復もする」という主体的な要素を強調しています。
健康な人が病気になることを予想外とする「鬼の霍乱」と、心のあり方で健康を保てるとする「病は気から」は、対照的な視点を持つと言えるでしょう。
石橋を叩いて渡る
「石橋を叩いて渡る」は、「用心に用心を重ねて物事を行う」という意味のことわざです。
「鬼の霍乱」は、普段健康な人が「予期せず」「突然」病気になることを表します。一方、「石橋を叩いて渡る」は、あらゆることに「事前に備えて」「慎重に」行動することを表します。
つまり、「予想外の出来事」を表す「鬼の霍乱」と、「予想して備える姿勢」を表す「石橋を叩いて渡る」は、対義的な関係にあると言えます。
健康管理を「石橋を叩いて渡る」ように慎重にしていれば、「鬼の霍乱」は起こりにくいかもしれませんね。
健康第一
「健康第一」は、ことわざというよりも四字熟語に近い表現ですが、「何よりも健康が大切」という意味を持ちます。
「鬼の霍乱」が「健康な人が病気になる珍しい状況」を表すのに対し、「健康第一」は「常に健康を最優先すべき」という価値観を表現しています。
「健康第一」を心がけている人ほど、いざ病気になったときに「鬼の霍乱だね」と言われやすいかもしれません。
健康を大切にする姿勢と、それでも時には病気になってしまうという現実のギャップが、まさに「鬼の霍乱」という言葉の面白さなのです。
「英語」で言うと?
「鬼の霍乱」を英語でどう表現するか、いくつかのパターンを見ていきましょう。
Even the strongest can fall ill(最も強い者でも病気になることがある)
これは「鬼の霍乱」の意味を直接的に英語で表現したものです。
"Even the strongest"は「最も強い者でさえも」という意味で、「鬼のように強い人」というニュアンスを表現しています。"fall ill"は「病気になる」という意味です。
この表現は、「どんなに健康な人でも病気になることがある」という普遍的な真理を伝える言い方として使えます。
英語圏では日本のような「ことわざ」の形式で表現されることは少ないですが、この文章で「鬼の霍乱」の意味は十分に伝わります。
It's rare for him to get sick(彼が病気になるのは珍しい)
これは、より日常会話的な表現です。
"It's rare"は「珍しい、めったにない」という意味で、「鬼の霍乱」の持つ「予想外」「珍しい」というニュアンスを表現しています。
例えば、職場で同僚が「John is out sick today(ジョンは今日病欠だよ)」と言ったときに、「Really? It's rare for him to get sick. He's always so healthy(本当に?彼が病気になるなんて珍しいね。いつもすごく健康なのに)」と返すような使い方ができます。
この表現はシンプルで使いやすく、実際の会話でも自然に使えるのが利点です。
Even a champion can have an off day(チャンピオンにも調子の悪い日がある)
これは、スポーツやビジネスの文脈でよく使われる表現です。
"champion"は「王者、一流の人」という意味で、「鬼のように強い人」を表現しています。"have an off day"は「調子の悪い日がある」という意味です。
この表現は、「どんな優れた人にも不調の時がある」という広い意味で使われ、病気だけでなく、パフォーマンスの低下や失敗など、さまざまな状況に応用できます。
「鬼の霍乱」は主に病気について使われますが、この英語表現はもう少し幅広い「調子の悪さ」に使えるという点で、やや意味が広がっています。
また、英語圏には"Even Homer sometimes nods"(ホメロスでさえ時には居眠りする)という古典的な表現もあり、これは日本の「弘法にも筆の誤り」に近い意味で、「名人でも失敗する」ことを表します。
「鬼の霍乱」に完全に一致する英語のことわざはありませんが、状況に応じてこれらの表現を使い分けることで、同じニュアンスを伝えることができるでしょう。
まとめ
「鬼の霍乱」ということわざについて、詳しく見てきました。
改めてポイントをまとめると、以下のようになります。
- 意味:普段とても健康で頑丈な人が珍しく病気になることを、冷やかし半分で表現する言葉
- 由来:平安時代からある「霍乱」(激しい急性胃腸炎)に、「鬼のように強い人でもかかる」「鬼のように苦しい」という意味が込められている
- 使い方:健康な人が病気になったときに「珍しいね」という驚きを込めて使う。ただし相手との関係性や状況を考えて使うことが大切
- 類語:「猿も木から落ちる」「弘法にも筆の誤り」など、名人や達人でも失敗するという意味のことわざと似ている
- 英語:「Even the strongest can fall ill」など、状況に応じた表現がある
このことわざは、「どんなに健康そうな人でも、時には体調を崩すことがある」という、ある意味では当たり前だけれど、起こると驚いてしまう人間の本質を表現した言葉なんですね。
普段から健康管理に気をつけることは大切ですが、完璧な健康状態を保ち続けることは誰にもできません。「鬼の霍乱」という言葉は、そんな人間らしさを認める、ちょっとユーモラスな表現と言えるでしょう。
ただし、使うときは相手の気持ちに配慮することをお忘れなく。本当に体調が悪い人に対しては、まず心配の言葉をかけることが何より大切です。
友人や家族との会話の中で、「珍しいこともあるんだね」という意味で軽く使うのが、このことわざの最も自然な使い方だと思います。
ぜひ、適切な場面でこの「鬼の霍乱」ということわざを使ってみてください。日本語の豊かな表現力を味わえますよ!