
「見ざる言わざる聞かざる」って、どこかで聞いたことがありますよね。三匹の猿が目や耳や口を手で覆っている姿を思い浮かべる方も多いかもしれませんね。でも、「具体的にどんな意味なの?」「どういう場面で使えばいいの?」と聞かれると、ちょっと戸惑ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実はこのことわざ、日光東照宮の有名な彫刻でもあり、古くから日本人の生き方の指針として大切にされてきた教えなんですね。現代でもビジネスシーンや人間関係で役立つ、とても奥深い言葉なんです。
この記事では、「見ざる言わざる聞かざる」の意味や由来、実際の使い方を例文でご紹介しながら、類語や対義語、英語表現まで詳しく解説していきますね。最後まで読んでいただくと、きっと日常生活で自信を持って使えるようになると思いますよ。
「見ざる言わざる聞かざる」を理解するための基礎知識

読み方
「見ざる言わざる聞かざる」は、「みざるいわざるきかざる」と読みます。
一般的には「見ざる聞かざる言わざる」という順序で知られていることが多いんですね。でも、「見ざる言わざる聞かざる」という順序も使われていて、どちらも正しい表現なんですよ。口の制御が特に重要だと考えられる場合に、「言わざる」を先に持ってくることもあるんですね。
意味
このことわざの意味は、他人の欠点や過ち、自分にとって都合の悪い悪いことを「見ない・言わない・聞かない」のが良いという教えを表しています。
もう少し詳しく言うと、人の短所や悪い噂話、ネガティブな情報をあえて見聞きせず、また自分からも口にしないことで、心を清らかに保つことができるという考え方なんですね。悪いものに触れないことで、自分自身も悪い影響を受けずに済むという積極的な戒めが込められているんです。
ただし、現代では「見て見ぬふりをする」「無関心を装う」といった否定的な意味で使われることもありますよね。これは本来の意味とは少し違うニュアンスなんですが、文脈によってはそういった使い方もされるので注意が必要かもしれませんね。
語源と由来
「見ざる言わざる聞かざる」の語源は、「ざる」という言葉にダブルミーニングが隠されているところがポイントなんですね。
「ざる」は日本語の打消しの助動詞「ず」の連体形ですよね。つまり「見ない・言わない・聞かない」という否定の意味を表しています。同時に、「猿(さる)」とも掛けられているんです。だから三匹の猿が象徴として使われているんですね。
このことわざの起源については、いくつかの説があるんですよ。
中国から天台宗を通じて伝わったという説が有力とされています。中国には「不見不聞不言」という言葉があって、これが日本に伝わって「見ざる聞かざる言わざる」になったと言われているんですね。
また、平安時代中期の僧である良源さんの歌に起源があるという説もあります。さらに、儒教の経典である論語にも「礼にあらざれば視るなかれ、礼にあらざれば聴くなかれ、礼にあらざれば言うなかれ、礼にあらざれば動くなかれ」という似た表現があるんですよ。礼節を欠くことは避けなさいという教えですね。
日本で最も有名なのは、栃木県にある日光東照宮の「三猿」の彫刻でしょう。神厩舎(しんきゅうしゃ)という神馬をつなぐ厩の長押には、猿の彫刻が8面あって、その中の一つが「見ざる言わざる聞かざる」を表す三匹の猿なんです。これは「日光三彫刻」の一つとしても知られていて、多くの観光客が訪れる有名スポットになっているんですね。
この三猿の彫刻には、深い教育的な意味があると言われています。子どもの成長過程において、幼い頃には悪いことを見聞きせず、良いことだけを吸収して育ってほしいという親の願いが込められているんですね。子育ての理想像を表しているとも言われているんですよ。
ちなみに、「見ざる・聞かざる・言わざる」の三つに「行わざる」を加えた「四猿」の説もあるんです。悪いことを「見ない・聞かない・言わない・行わない」という、より徹底した教えですね。
「使い方」がわかる「例文」3選

1:「職場でトラブルが起きても、彼は見ざる言わざる聞かざるを決め込んでいる」
この例文は、問題が起きているのに関わろうとしない姿勢を表していますね。
ビジネスシーンでよく見かける状況かもしれません。同僚間のトラブルや部署間の対立があっても、自分に火の粉が降りかかってこないようにと、あえて何も見なかった・聞かなかったことにする人っていますよね。
この場合は、どちらかというと否定的なニュアンスで使われています。本来の「悪いものから遠ざかる」という意味ではなく、「責任を回避する」「無関心を装う」という意味合いが強いんですね。現代ではこういった使い方も一般的になっているんです。
2:「子どもには見ざる言わざる聞かざるの精神で、悪い影響から守ってあげたい」
こちらは、本来の教育的な意味合いで使われている例文ですね。
親として子どもを育てる際に、暴力的な映像や下品な言葉、人を傷つけるような情報などから遠ざけたいという思いは、多くの方が持っているのではないでしょうか。特に幼い時期には、できるだけ良いものだけを見聞きして、健やかに成長してほしいという願いですよね。
この使い方は、日光東照宮の三猿が本来持っていた意味に近いんです。悪いものを遠ざけることで、純粋な心を守るという前向きな姿勢が表れていますね。
3:「人の陰口や悪口は、見ざる言わざる聞かざるで流すのが一番だよ」
この例文は、人間関係を円滑に保つための処世術として使われているパターンですね。
職場でも学校でも、どこにでも噂話や陰口ってありますよね。そういったネガティブな情報に対して、いちいち反応したり広めたりせず、聞き流すのが賢明だという教えです。
現代的な解釈として、職場での「心理的安全性」を高めるためにも、悪口や陰口を控え、前向きな言葉を使うことが推奨されているんですね。この例文は、そういった現代のビジネスマナーとも通じる使い方だと言えるでしょう。
似た意味の「ことわざ」は?「類語」「言い換え」表現
君子危うきに近寄らず
「君子危うきに近寄らず」は、徳のある立派な人は、危険なものや怪しいものには最初から近づかないという意味のことわざですね。
「見ざる言わざる聞かざる」と似ているのは、悪いものや危険なものから距離を置くという姿勢です。ただし、「君子危うきに近寄らず」の方が、より自己防衛や安全確保の意味合いが強いかもしれませんね。
どちらも賢明な生き方を示していますが、「見ざる言わざる聞かざる」が「悪いものを見聞きしない」という受動的な側面も含むのに対して、「君子危うきに近寄らず」は「積極的に避ける」というニュアンスがあるんですよ。
触らぬ神に祟りなし
「触らぬ神に祟りなし」は、関わらなければトラブルに巻き込まれることもないという意味ですね。
このことわざも「見ざる言わざる聞かざる」と共通する部分があります。どちらも余計なことに首を突っ込まない、関わらないことで平穏を保つという考え方なんです。
ただ、「触らぬ神に祟りなし」の方が、もう少し消極的というか、面倒ごとを避けるというニュアンスが強いかもしれませんね。「見ざる言わざる聞かざる」の方が、心の清らかさを保つという精神的な側面が強調されているんですよ。
沈黙は金、雄弁は銀
「沈黙は金、雄弁は銀」は、何も語らないことの方が、よく話すことよりも価値があるという意味のことわざです。
このことわざは特に「言わざる」の部分と関連していますよね。余計なことを喋らない、口を慎むことの大切さを教えてくれています。
「見ざる言わざる聞かざる」が「見る・言う・聞く」の三つの行為全体を戒めているのに対して、「沈黙は金」は特に「言葉」に焦点を当てているんですね。でも、どちらも口を慎むことの重要性を説いているという点では共通していますよ。
口は災いの元
「口は災いの元」は、不用意な発言が災いを招く原因になるという教えですね。
これも「言わざる」の部分と強く結びついていますよね。軽はずみに何でも口にしてしまうと、後で困ったことになるかもしれませんよという警告なんです。
「見ざる言わざる聞かざる」が悪いものを遠ざけるという包括的な教えなのに対して、「口は災いの元」は発言することのリスクに特化している点が違いますね。でも、どちらも言葉を慎むことの大切さを教えてくれているという点では同じ方向を向いているんですよ。
「対義語」は?
正義を見て為さざるは勇無きなり
「正義を見て為さざるは勇無きなり」は、正しいことだと分かっているのに行動しないのは勇気がない証拠だという意味ですね。
これは「見ざる言わざる聞かざる」とは正反対の姿勢を示しています。悪いことや不正を見たら、見て見ぬふりをするのではなく、勇気を持って立ち向かうべきだという教えなんです。
「見ざる言わざる聞かざる」が消極的な平穏を求めるのに対して、こちらは積極的に正義を実現しようという姿勢ですよね。状況によってどちらの態度が適切かは変わってくるかもしれませんね。
物言えば唇寒し秋の風
実はこれは厳密には対義語ではないんですが、言った後の後悔を表すという点で、「言わざる」の対照的な状況を示しているんですね。
何か言ってしまった後に、「ああ、言わなければよかった」と後悔する気持ちを表しています。つまり、「言わざる」を守らなかった結果とも言えるんですよ。
「見ざる言わざる聞かざる」が予防的な教えだとすれば、「物言えば唇寒し」は失敗した後の反省を示しているとも言えますね。
見て見ぬふりをしない
これは問題があったらきちんと向き合うという、現代的な表現ですね。
特に職場や社会問題において、何か悪いことが起きているのを知りながら無視するのではなく、しっかりと対応するという姿勢を示しています。
「見ざる言わざる聞かざる」が消極的に解釈された場合の対義語と言えるでしょう。コンプライアンスやハラスメント対策が重視される現代社会では、こちらの姿勢が求められることも多いんですね。
「英語」で言うと?
See no evil, hear no evil, speak no evil(悪を見ず、悪を聞かず、悪を語らず)
これが「見ざる言わざる聞かざる」の最も一般的な英語表現なんですね。
直訳すると「悪を見ない、悪を聞かない、悪を語らない」となります。日本語の表現と非常に似ていますよね。実は、日光東照宮の三猿は海外でも有名で、この英語表現も世界中で知られているんですよ。
英語圏でも三匹の猿のイメージと結びついて使われることが多く、日本文化が世界に広まった例の一つとも言えるでしょう。ただし、英語では「evil(悪)」という言葉が明確に使われているので、日本語よりもストレートな表現になっているかもしれませんね。
Turn a blind eye(見て見ぬふりをする)
「Turn a blind eye」は、わざと気づかないふりをするという意味の慣用表現ですね。
これは「見ざる」の部分に対応する英語表現と言えます。特に、問題があることを知りながら、あえて無視するというニュアンスがあるんです。
この表現の起源は、イギリスの海軍提督ネルソンが、片目を失明していたにもかかわらず、都合の悪い信号を「見えない」と言い張ったという逸話から来ているとされているんですよ。歴史的な背景があるんですね。
Silence is golden(沈黙は金なり)
「Silence is golden」は、沈黙することに価値があるという意味の英語のことわざですね。
これは先ほど類語のところでご紹介した「沈黙は金、雄弁は銀」と同じ表現なんです。英語の方が元になっていて、それが日本語に訳されたんですね。
「言わざる」の部分、つまり余計なことを喋らないことの大切さを教えてくれる表現として、英語圏でも広く使われているんですよ。ビジネスシーンでも日常会話でも使える便利な表現ですね。
まとめ
「見ざる言わざる聞かざる」について、詳しく見てきましたがいかがでしたでしょうか。
このことわざの本来の意味は、悪いものを見聞きせず、また口にもしないことで、心を清らかに保つという教えなんですね。日光東照宮の三猿の彫刻に象徴されるように、特に子どもの健やかな成長を願う意味も込められているんです。
現代では、良い意味でも悪い意味でも使われることがあります。人間関係を円滑にするために悪口や陰口を避けるという前向きな使い方もあれば、問題から目を背けて無関心を装うという否定的な使い方もあるんですね。
大切なのは、状況に応じて適切に判断することかもしれません。本当に避けるべき悪い影響からは距離を置きつつ、でも、正義を行うべき時には勇気を持って行動する。そんなバランス感覚が求められているのかもしれませんね。
類語や対義語、英語表現も合わせて覚えておくと、より深く理解できると思いますよ。ぜひ日常生活の中で、このことわざの意味を思い出しながら使ってみてくださいね。きっと人間関係がもっとスムーズになるのではないでしょうか。