
「昔取った杵柄」ということわざ、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。でも、正確な意味を説明しようとすると、ちょっと迷ってしまうこともありますよね。
「杵柄って何のこと?」「どんなときに使うの?」「自分が使っても相手に使ってもいいの?」など、気になることがたくさんあるかもしれませんね。
この記事では、「昔取った杵柄」の意味や由来、実際の使い方まで、わかりやすく解説していきます。例文や類語、対義語、さらには英語での表現方法も紹介しますので、きっとこのことわざを深く理解していただけると思いますよ。
「昔取った杵柄」を理解するための基礎知識

読み方
「昔取った杵柄」は、「むかしとったきねづか」と読みます。
「杵柄」の部分を「きねづか」と読むのがポイントですね。「きねがら」や「きねえ」と読み間違えないように注意してください。杵(きね)は餅つきで使う道具、柄(づか)はその持ち手の部分を指しているんですね。
意味
「昔取った杵柄」は、若い頃に身につけた技能や技量のことを指します。また、その技術が年月を経ても衰えていないということも表現しているんですね。
もう少し具体的に言うと、昔習得した技術や腕前が、長い時間が経っても体に染みついていて、いざというときにまだ通用するという意味なんです。
「若い頃は野球をやっていたから、久しぶりにやってもまだそこそこできる」といった状況で使われることが多いですよね。年齢を重ねても失われない、体に染みついた技術や経験を表す、とても日本らしいことわざだと思います。
語源と由来
「昔取った杵柄」の由来は、餅つきの文化に根ざしています。
杵というのは、お正月やお祝いの時に餅をつくための道具ですよね。臼に入れた餅米を、木製の大きな杵で力強くついていく、あの光景を思い浮かべていただけるでしょうか。
餅つきは年に一度か二度、お正月などの特別な行事の時にしか行わないことが多いんです。それでも、一度杵の柄を握った感触というのは、長い年月が経っても体が覚えているものなんですね。久しぶりに杵を握っても、その感触がすぐに蘇ってくる。
この「杵の柄を握った感覚が忘れられない」という経験から、「昔身につけた技術は簡単には失われない」という意味のことわざが生まれたとされています。
日本の餅文化は縄文時代の稲作伝来にまで遡ると言われていますから、このことわざも非常に古い歴史を持っているんですね。実際、江戸時代末期の上方いろはかるたにも登場しているという記録が残っています。
餅つきという日本の伝統的な行事が、人々の生活に深く根付いていたからこそ生まれた、味わい深いことわざだと感じますよね。
「使い方」がわかる「例文」3選

それでは、「昔取った杵柄」を実際にどのように使うのか、具体的な例文を見ていきましょう。シチュエーションごとの使い方がわかると、より理解が深まると思いますよ。
1:「父は定年後、昔取った杵柄で近所の子どもたちにピアノを教え始めた」
この例文は、長年のブランクがあっても、若い頃に身につけた技術が今でも役立っているという状況を表していますね。
お父さんは若い頃ピアノを習っていたけれど、仕事が忙しくなって長い間弾いていなかったのかもしれません。でも定年を迎えて時間ができたとき、昔の技術がまだ体に残っていて、それを活かして人に教えることができるようになった。そんな素敵なシーンが想像できますよね。
このように、過去に習得した技術が現在も活きているという前向きな意味で使われることが多いんです。
2:「昔取った杵柄で、彼女は急な依頼にも見事な英語のプレゼンテーションで応えた」
この例文は、ビジネスシーンでの使用例ですね。
彼女さんは以前、英語を使う仕事をしていたのかもしれません。今は別の部署にいるけれど、急に英語のプレゼンが必要になったとき、昔身につけた語学力がまだ衰えていなくて、素晴らしいパフォーマンスを発揮できた。そんな状況が伝わってきますよね。
「昔取った杵柄」は、このように予期せぬ場面で過去の経験が役立つという意味でも使えるんですね。
3:「昔取った杵柄だから、草野球でもまだまだ若い人には負けませんよ」
この例文は、自分自身について謙遜しながらも、経験に裏打ちされた自信を表現しているケースですね。
若い頃に野球をやっていた経験がある方が、久しぶりに草野球に参加するような場面でしょうか。「もう若くはないけれど、昔鍛えた技術はまだ通用する」という、ちょっと照れくさそうな自信が感じられますよね。
このように、「昔取った杵柄」は自分に対して使うときは謙遜のニュアンスを含むことが多いんです。一方で、相手に対して使うときは「さすがですね」という褒め言葉になりますから、その違いも覚えておくといいかもしれませんね。
似た意味の「ことわざ」は?「類語」「言い換え」表現
「昔取った杵柄」と似た意味を持つことわざや表現はいくつかあります。それぞれ微妙にニュアンスが異なるので、状況に応じて使い分けられると素敵ですよね。
雀百まで踊り忘れず
「雀百まで踊り忘れず」(すずめひゃくまでおどりわすれず)は、若い頃の習慣や身についた癖は、年をとっても直らないという意味のことわざです。
雀が跳ねるように動く仕草は、百歳になっても変わらないということから来ているんですね。「昔取った杵柄」と似ていますが、こちらは技術というよりも「習性」や「癖」に重点が置かれているんです。
「彼は若い頃から朝型人間で、定年後の今も雀百まで踊り忘れずで毎朝5時起きだ」というように、長年の生活習慣や性格が変わらないことを表現する際に使われることが多いですね。
亀の甲より年の功
「亀の甲より年の功」(かめのこうよりとしのこう)は、長年の経験から得た知恵や技術は価値があるという意味です。
亀の甲羅は長寿の象徴として珍重されますが、それよりも人間が長い年月をかけて積み上げてきた経験の方が価値があるという教えなんですね。
「昔取った杵柄」が具体的な技術に焦点を当てているのに対して、こちらは経験全般から得られる知恵や判断力を重視しているという違いがあります。「若い人には思いつかないアイデアを出せるのは、亀の甲より年の功だね」というような使い方ができますよ。
老いたる馬は道を忘れず
「老いたる馬は道を忘れず」(おいたるうまはみちをわすれず)は、年老いた馬でも、一度通った道は覚えているという意味から、経験豊富な人は状況判断に優れているということを表すことわざです。
中国の故事から来ていて、戦で道に迷った軍が、老馬に道案内をさせて無事に帰還できたという話が元になっているんですね。
「昔取った杵柄」が技術の記憶であるのに対して、こちらは経験に基づく判断力や記憶力の確かさを強調している点が異なりますね。「この商談の進め方は、老いたる馬は道を忘れずで、ベテランの彼に任せよう」といった使い方ができます。
習い性となる
「習い性となる」(ならいせいとなる)は、繰り返し習慣づけたことが自然と身につき、本来の性質のようになるという意味の表現です。
これは「昔取った杵柄」とかなり近い意味を持っていますが、どちらかというと習慣化のプロセスに注目した表現だと言えるかもしれませんね。「毎日練習を続けたおかげで、習い性となって自然に体が動くようになった」というような使い方をします。
「対義語」は?
「昔取った杵柄」とは反対の意味を持つことわざも見ていきましょう。対義語を知ることで、ことわざの意味がより鮮明になってきますよね。
麒麟も老いては駑馬に劣る
「麒麟も老いては駑馬に劣る」(きりんもおいてはどばにおとる)は、どんなに優れた才能を持っていても、年をとれば凡庸な者にも劣るようになるという意味のことわざです。
麒麟は伝説上の優れた動物、駑馬はのろまな馬を指します。かつてどんなに優秀だった人でも、老いによって能力が衰えてしまうという、ちょっと厳しい現実を表しているんですね。
「昔取った杵柄」が「技術は衰えない」という前向きな意味なのに対して、こちらは「老いによる衰え」を認める表現になっているという点で、まさに対義的な関係にありますよね。
昔の剣今の菜刀
「昔の剣今の菜刀」(むかしのつるぎいまのながたな)は、かつて立派だったものが、今では役に立たないものになってしまったという意味です。
戦いで使われていた立派な剣が、今では野菜を切る包丁程度の価値しかないという比喩ですね。過去の栄光が現在では通用しないという、やや悲観的なニュアンスを持っています。
「昔取った杵柄」が「過去の技術が今も役立つ」というポジティブな意味であるのに対して、こちらは「過去の価値が現在では失われている」という否定的な意味になっているんですね。
鳴かず飛ばず
「鳴かず飛ばず」(なかずとばず)は、長い間何の活躍もせず、目立った成果を出せない状態を表す慣用句です。
鳥が鳴きもせず飛びもしない、つまり何の動きも見せない様子から来ているんですね。才能や技術があっても、それを発揮する機会がない、または発揮できていない状態を指します。
「昔取った杵柄」が過去の技術を活かして活躍する姿を表すのに対して、「鳴かず飛ばず」は能力を発揮できていない停滞した状態を表現しているという点で、対照的だと言えますね。
「英語」で言うと?
「昔取った杵柄」を英語で表現する場合、いくつかの言い方がありますよ。それぞれの表現が持つニュアンスの違いも見ていきましょうね。
Utilizing one's experience of former days(以前の経験を活用する)
「Utilizing one's experience of former days」は、昔の経験を活用するという直接的な表現です。
「utilize」は「活用する」「利用する」という意味で、「former days」は「以前の日々」「かつての時代」を指します。この表現は「昔取った杵柄」の意味をかなり正確に英語で説明していると言えますね。
ビジネスシーンなどのフォーマルな場面で使いやすい表現です。「He is utilizing his experience of former days to train new employees.」(彼は昔取った杵柄で新入社員を指導している)というような使い方ができますよ。
Old hand(熟練者、ベテラン)
「Old hand」は、ある分野での長い経験を持つ熟練者やベテランを指す表現です。
この「hand」は「手」というよりも「手腕」「技量」を意味していて、「old」と組み合わせることで「長年の経験を持つ熟練した人」というニュアンスになるんですね。
「My grandfather is an old hand at hunting.」(祖父は昔取った杵柄で狩猟が得意だ)というように、特定の技能に長けている人を表現する際に使える、とても便利な表現ですよ。カジュアルな会話でもよく使われます。
Once learned, never forgotten(一度学んだら忘れない)
「Once learned, never forgotten」は、一度身につけた技術は決して忘れないという意味の表現です。
「昔取った杵柄」の核心である「体に染みついた技術は失われない」という意味を、シンプルかつ的確に表現していますよね。
「Riding a bicycle is once learned, never forgotten.」(自転車の乗り方は、昔取った杵柄で一度覚えたら忘れない)というように、身体が覚えている技術について語る際に特に効果的な表現だと思います。
まとめ
「昔取った杵柄」は、若い頃に身につけた技能や技量が、年月を経ても衰えていないことを表す、とても味わい深いことわざですね。
餅つきという日本の伝統的な文化から生まれたこの言葉は、長い間体に染みついた技術や経験の価値を教えてくれます。自分に使うときは謙遜のニュアンスを含み、相手に使うときは尊敬や称賛の気持ちを表現できるという、使い分けのポイントも覚えておくといいですよね。
類語である「雀百まで踊り忘れず」や「亀の甲より年の功」との違いを理解することで、より適切な表現を選べるようになるかもしれません。また、対義語である「麒麟も老いては駑馬に劣る」を知ることで、このことわざが持つポジティブなメッセージがより鮮明に感じられたのではないでしょうか。
英語では「old hand」や「Once learned, never forgotten」といった表現で同じような意味を伝えることができますから、国際的なコミュニケーションの場でも活用できそうですね。
人生経験や長年培ってきた技術は、かけがえのない財産です。「昔取った杵柄」という言葉を使って、自分自身や周りの方々の経験の価値を再認識してみてはいかがでしょうか。ぜひ日常会話やビジネスシーンで、このことわざを使ってみてくださいね。