
「乗りかかった船だから最後までやり遂げよう」なんて言葉、聞いたことはありませんか?
日常会話やビジネスシーンでも時々耳にすることわざですが、いざ「どういう意味?」と聞かれると、正確に説明できる人は意外と少ないかもしれません。
このことわざには、一度始めたことは途中で投げ出せないという深い意味が込められています。
でも、どうしてそんな意味になるのか、語源はどこから来ているのか、実際にどう使えばいいのか、気になりますよね。
この記事では、「乗りかかった船」の意味から由来、実際の使い方まで、例文を交えながらわかりやすく解説していきます。
類語や対義語、英語表現も合わせて紹介しますので、この記事を読めば、あなたも自信を持ってこのことわざを使えるようになりますよ。
「乗りかかった船」を理解するための基礎知識

読み方
「乗りかかった船」は、「のりかかったふね」と読みます。
特に読み間違いやすいポイントはありませんが、「乗りがかった」や「乗りかけた」と言い間違える人もいるので、「乗りかかった」としっかり覚えておきましょう。
意味
「乗りかかった船」とは、一度始めてしまった物事や関わりを持った事柄は、途中でやめることができず、最後までやり遂げなければならない状況を表すことわざです。
船に乗ってしまったら、もう岸に戻ることはできないという比喩から来ています。
つまり、「すでに関わってしまった以上、責任を持って最後まで取り組もう」という覚悟や決意を表現する際に使われる言葉なんです。
ビジネスシーンでは、プロジェクトに参加した後で「やっぱり大変だからやめたい」と思っても、「乗りかかった船だから頑張ろう」と自分を奮い立たせる場面でよく使われます。
また、人間関係においても、一度約束したことや引き受けたことは、多少困難があっても最後まで責任を持とうという気持ちを表すときに用いられます。
語源と由来
このことわざの語源は、船に乗って岸を離れたら、途中で降りることができないという状況から来ています。
江戸時代の人々にとって、船は重要な交通手段でした。
一度船に乗り込んで港を離れてしまえば、目的地に着くまで途中で降りることは不可能です。
たとえ航海中に嵐に遭ったり、船酔いで苦しくなったりしても、もう引き返すことはできません。
そこから、「一度始めたことは、どんなに困難があっても最後までやり遂げるしかない」という教訓が生まれたのです。
文献としては、江戸時代初期の浮世草子『好色五人女』(1686年)に初出が見られるとされています。
この作品は井原西鶴による小説で、当時の町人文化を反映した内容となっており、その中でこのことわざが使われていたことから、少なくとも江戸時代前期には一般的に使われていたと考えられます。
また、「船」という交通手段が身近だった時代だからこそ、多くの人に実感を持って理解されやすいことわざだったのでしょう。
「使い方」がわかる「例文」3選

1:「プロジェクトは大変だが、乗りかかった船だから最後までやり遂げよう」
これはビジネスシーンでよく使われる典型的な例文です。
新しいプロジェクトに参加したものの、予想以上に仕事が大変で、途中で投げ出したくなることってありますよね。
そんなとき、「もう引き受けてしまったのだから、責任を持って最後までやり遂げよう」という決意を表すために使います。
同僚同士で励まし合う場面や、上司が部下を鼓舞する場面でも使える表現です。
「乗りかかった船」という言葉には、後戻りできない状況を受け入れつつ、前向きに取り組もうという意志が込められています。
2:「彼女との関係は複雑だけど、乗りかかった船だし、しっかり向き合うつもりだ」
この例文は、人間関係における覚悟を表しています。
恋愛や友情において、途中で関係が複雑になったり、問題が起きたりすることがありますよね。
でも、「もう関わってしまった以上、逃げずにきちんと向き合おう」という決意を示すときに使えます。
ここでの「乗りかかった船」は、すでに築いた関係性に対する責任感を表現しているんです。
軽い気持ちで始めたことではあっても、一度関わった以上は真摯に向き合うべきだという姿勢が感じられます。
3:「町内会の役員を引き受けたのは失敗だったかもしれないが、乗りかかった船だから頑張るしかない」
日常生活でもこのことわざは使えます。
町内会やPTA、ボランティア活動など、軽い気持ちで引き受けたものの、実際にやってみると想像以上に大変だったという経験、ありませんか?
そんなとき、「もう引き受けてしまったのだから、任期が終わるまで責任を持って務めよう」という気持ちを表すのにぴったりです。
この例文のポイントは、後悔の気持ちもありつつ、でも最後までやり遂げる覚悟を示している点です。
「乗りかかった船」には、必ずしも前向きな気持ちだけではなく、多少の諦めや覚悟も含まれているのが特徴なんですね。
似た意味の「ことわざ」は?「類語」「言い換え」表現
騎虎の勢い(きこのいきおい)
「騎虎の勢い」は、虎に乗ってしまったら、途中で降りると食べられてしまうので、最後まで乗り続けるしかないという中国の故事から来たことわざです。
意味は「乗りかかった船」とほぼ同じで、一度始めたことは途中でやめられないという状況を表します。
ただし、「騎虎の勢い」の方が、より危険で後戻りできない緊迫した状況を強調する傾向があります。
「乗りかかった船」が日常的な場面で広く使えるのに対し、「騎虎の勢い」はやや文語的で、重大な決断や危機的状況で使われることが多いですね。
渡りかけた橋(わたりかけたはし)
「渡りかけた橋」も「乗りかかった船」と同じく、一度始めたことは途中でやめられないという意味のことわざです。
橋を渡り始めたら、途中で引き返すより渡り切った方が早いという状況から来ています。
ニュアンスの違いとしては、「乗りかかった船」が「もう後戻りできない」という諦めや覚悟を含むのに対し、「渡りかけた橋」は「ここまで来たのだから最後まで行こう」という前向きな気持ちを表すことが多いです。
また、「渡りかけた橋」の方が、ゴールが見えている状態というニュアンスが強いかもしれません。
矢でも鉄砲でも(やでもてっぽうでも)
「矢でも鉄砲でも」は、どんな困難があっても恐れずに立ち向かうという強い決意を表す慣用句です。
「乗りかかった船」と共通するのは、「もう後には引けない」という覚悟の部分ですが、「矢でも鉄砲でも」の方が、より攻撃的で積極的な姿勢を示します。
「乗りかかった船だから頑張る」は受動的な覚悟であるのに対し、「矢でも鉄砲でも来い」は能動的な挑戦の意志を示すという違いがあります。
後には引けない(あとにはひけない)
「後には引けない」は、ことわざというよりは慣用的な表現ですが、「乗りかかった船」と非常に近い意味を持ちます。
文字通り、もう後戻りできない状況を表し、ビジネスシーンや日常会話で広く使われています。
「乗りかかった船」が比喩的で文学的な表現であるのに対し、「後には引けない」はより直接的でシンプルな言い方です。
状況や相手に応じて、使い分けると良いでしょう。
「対義語」は?
君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず)
「君子危うきに近寄らず」は、賢い人は危険なことには最初から関わらないという意味のことわざです。
「乗りかかった船」が「一度始めたら最後までやり遂げる」という姿勢を示すのに対し、こちらはそもそも危険なことには手を出さないという予防的な姿勢を表します。
つまり、「乗りかかった船」の状況になる前に、リスクを避けて賢く行動しようという教えですね。
両者は、困難への向き合い方という点で対照的な考え方を示しています。
見切り千両(みきりせんりょう)
「見切り千両」は、損失が拡大する前に見切りをつけて撤退することの大切さを説くことわざです。
投資や商売で損が出始めたとき、執着せずに早めに手を引く判断ができれば、千両(大金)の価値があるという意味です。
「乗りかかった船」が「最後までやり遂げる」覚悟を示すのに対し、「見切り千両」は適切なタイミングで撤退する勇気を重視します。
ビジネスの世界では、どちらの判断が正しいかは状況によりますが、考え方としては正反対ですね。
逃げるが勝ち(にげるがかち)
「逃げるが勝ち」は、無理に戦うより逃げた方が結果的に得をすることもあるという意味のことわざです。
不利な状況では、無理に続けるより撤退する方が賢明だという教えですね。
「乗りかかった船」が「途中で降りることはできない」という前提に立つのに対し、「逃げるが勝ち」は撤退も立派な戦略だと考えます。
特に、自分の身を守ることが最優先される状況では、「逃げるが勝ち」の方が適切な判断となることもあるでしょう。
「英語」で言うと?
In for a penny, in for a pound(少額を投じたなら、全額を投じる)
この英語のことわざは、少しでも関わったなら、最後まで徹底的に関わるべきだという意味です。
直訳すると「1ペニー投じたなら、1ポンド投じる」となり、イギリスの通貨単位から来ています。
「乗りかかった船」と同様に、一度始めたことは中途半端にせず、最後までやり遂げようという覚悟を表します。
ビジネスシーンや日常会話でも広く使われる表現で、「もうここまで来たんだから、とことんやろう」というニュアンスが強いですね。
Past the point of no return(引き返せない地点を過ぎた)
この表現は、もう引き返すことができない段階に達したという意味です。
元々は航空用語で、飛行機が飛び立った後、燃料の関係で出発地に戻れなくなる地点のことを指していました。
「乗りかかった船」と非常に近い意味を持ち、後戻りできない状況を表現する際に使われます。
ただし、こちらの方がより客観的で、状況の説明に重点が置かれている印象です。
「We've passed the point of no return(もう引き返せない地点を過ぎてしまった)」のように使います。
Might as well be hanged for a sheep as a lamb(子羊を盗んで絞首刑になるなら、羊を盗んだ方がましだ)
このイギリスのことわざは、少し物騒な表現ですが、どうせ罰を受けるなら、徹底的にやった方が得だという意味です。
昔のイギリスでは、子羊を盗んでも羊を盗んでも同じ絞首刑だったため、「どうせ同じ罰なら、大きい羊を盗んだ方がいい」という皮肉めいた教訓から生まれました。
「乗りかかった船」と共通するのは、もう後戻りできないなら、最後までやり切ろうという覚悟の部分です。
ただし、やや不謹慎なニュアンスもあるので、使う場面には注意が必要ですね。
まとめ
「乗りかかった船」ということわざについて、意味から由来、使い方まで詳しく見てきました。
このことわざの核心は、一度始めたことは、どんなに困難があっても最後までやり遂げる覚悟を表現することにあります。
江戸時代の人々が船に乗った後の状況から学んだ教訓は、現代のビジネスシーンや人間関係においても、とても大切な考え方ですね。
使い方のポイントとしては、「途中で投げ出さずに最後までやる」という決意を示す場面で使うことです。
逆に、「乗りかかった船だが中止した」のように、途中で止める文脈では使えないので注意しましょう。
類語の「騎虎の勢い」や「渡りかけた橋」、対義語の「見切り千両」や「逃げるが勝ち」と比較することで、状況に応じた使い分けもできるようになります。
英語では「In for a penny, in for a pound」などの表現があり、国や文化が違っても、似たような考え方があることがわかりますね。
ぜひ、今日からあなたも「乗りかかった船」を日常会話やビジネスシーンで使ってみてください。
一度引き受けたことに責任を持って取り組む姿勢は、周囲からの信頼にもつながりますよ。
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