
「窮すれば通ず」ということわざ、聞いたことがある方は多いと思います。
でも、「正確にはどういう意味なの?」「どんな場面で使えばいいの?」と聞かれると、ちょっと迷ってしまいますよね。
このことわざは、ビジネスシーンや人生の転機で使われることが多く、困難な状況にいる人を励ます言葉としても知られています。
この記事では、「窮すれば通ず」の意味・由来・例文・類語・対義語・英語表現まで、わかりやすく丁寧に解説します。
読み終える頃には、自信を持ってこのことわざを使えるようになりますよ。
「窮すれば通ず」を理解するための基礎知識

読み方
「窮すれば通ず」は、「きゅうすればつうず」と読みます。
「窮」という漢字は「きゅう」と読み、「行き詰まる」「困る」という意味を持っています。
「通ず」は「つうず」と読み、現代語では「通じる」という形で使われますが、ことわざでは古典的な形の「通ず」が使われています。
意味
「窮すれば通ず」は、「行き詰まって困り果てた状況になると、かえって思いがけない活路や解決策が開け、道が通じる」という意味です。
つまり、絶体絶命のピンチに陥ったとき、人はそれまでとは違う視点で物事を考えるようになり、新しい発想や方法が生まれるという教えなんですね。
「どん底まで行けば、あとは上がるだけ」という前向きな考え方を表した言葉でもあります。
開き直りや視点の変更が、窮地を脱出する鍵になるという、人生の知恵が込められています。
語源と由来
「窮すれば通ず」は、中国の古典『易経(えききょう)』の「繋辞下(けいじか)」に由来することわざです。
『易経』は、占いの書として知られていますが、同時に哲学書としても重要な位置を占めており、東洋思想の根幹をなす古典の一つとされています。
原文は「窮すれば即ち変ず、変ずれば即ち通ず、通ずれば即ち久し」という一節です。
これを現代語訳すると、「行き詰まればすなわち変化が起こり、変化が起これば道が通じ、道が通じれば長く続く」という意味になります。
つまり、窮地に陥ることは決して終わりではなく、むしろ変化のきっかけとなり、新しい道を開くチャンスだという前向きなメッセージが込められているのです。
日本では、江戸時代初期の随筆『折たく柴の記』(1716年頃)に使用例が見られ、古くから日本人にも親しまれてきた言葉です。
数千年の時を超えて伝えられてきた、人類共通の知恵と言えるでしょう。
「使い方」がわかる「例文」3選

1:「会社が倒産寸前まで追い込まれたが、窮すれば通ずで新規事業が大成功し、見事に立ち直った」
この例文は、ビジネスシーンでの使用例です。
会社経営が行き詰まり、もうダメかもしれないという状況に追い込まれたとき、それまでとは全く違う発想で新しい事業に挑戦した結果、成功を収めたというケースですね。
窮地に立たされたからこそ、思い切った決断ができたという状況を表しています。
逆境をチャンスに変えた実例として、経営者や起業家の間でよく語られるエピソードです。
2:「転職活動がうまくいかず、貯金も底をついたが、窮すれば通ずというもので、友人の紹介で天職に出会えた」
これは、個人のキャリアにおける転機を表した例文です。
転職がうまくいかず、精神的にも経済的にも追い詰められた状況で、思わぬところから道が開けたというストーリーですね。
窮地に立たされたことで、それまで考えもしなかった選択肢に目を向けることができたという、まさに「窮すれば通ず」を体現した例です。
人生の岐路で迷っている人への励ましとしても使える表現です。
3:「研究が行き詰まって悩んでいたが、窮すれば通ずで、全く別の角度からアプローチしたら突破口が見えてきた」
この例文は、研究や創作活動など、知的作業における使用例です。
同じ方法で何度も試しても結果が出ず、完全に行き詰まった状態になったとき、発想を180度転換することで解決の糸口が見つかったというケースです。
学術研究だけでなく、問題解決全般に応用できる考え方として、幅広い分野で使われています。
「行き詰まったら視点を変えてみよう」という教訓が込められた使い方ですね。
似た意味の「ことわざ」は?「類語」「言い換え」表現
ピンチはチャンス
「ピンチはチャンス」は、困難な状況こそが成功への機会になるという意味の現代的な表現です。
「窮すれば通ず」とほぼ同じ意味で使われますが、こちらはより口語的でカジュアルな印象を与えます。
スポーツや日常会話でよく使われる言葉で、前向きな姿勢を強調したいときに効果的です。
ビジネスシーンでも「ピンチをチャンスに変える」という形で頻繁に使われており、若い世代にも馴染みやすい表現と言えるでしょう。
案ずるより産むが易し
「案ずるより産むが易し」は、事前にあれこれ心配するよりも、実際にやってみれば意外と簡単にできるという意味のことわざです。
「窮すれば通ず」と似ていますが、こちらは「行動することで道が開ける」という側面をより強調しています。
窮地に陥る前の段階で使われることが多く、迷っている人の背中を押す言葉として用いられます。
不安を抱えている人に「まずやってみよう」と励ます際に適した表現ですね。
災い転じて福となす
「災い転じて福となす」は、降りかかった災難や不幸を、知恵や努力によって逆に幸福に変えるという意味のことわざです。
「窮すれば通ず」が「窮地が自然と解決に向かう」というニュアンスなのに対し、こちらは「積極的に状況を好転させる」という意志的な行動を含んでいます。
失敗や挫折を経験した後、それを糧にして成長したという文脈で使われることが多い表現です。
単に道が開けるだけでなく、結果的により良い状態になるという希望を含んだ言葉と言えるでしょう。
塞翁が馬(さいおうがうま)
「塞翁が馬」は、人生の幸不幸は予測できないもので、一見不幸に見えることが幸福につながったり、その逆もあるという意味のことわざです。
中国の故事に由来する言葉で、人生の浮き沈みを長期的な視点で捉えるという哲学的な意味合いがあります。
「窮すれば通ず」が困難からの脱出を強調するのに対し、「塞翁が馬」は人生全体の予測不可能性を説いています。
今の苦しみが将来の幸せにつながるかもしれないという、より大きな時間軸で考える言葉ですね。
「対義語」は?
窮すれば濫す(きゅうすればらんす)
「窮すれば濫す」は、『論語』に由来することわざで、「小人は窮すると自暴自棄になり、道を外れた行動をする」という意味です。
「窮すれば通ず」が「困難な状況で道が開ける」というポジティブな意味なのに対し、こちらは「困窮すると堕落する」というネガティブな意味になります。
孔子は『論語』の中で「君子は窮すれども濫せず(君子は困窮しても道を守る)」と述べており、困難な状況での人間性の違いを説いています。
同じ「窮す」という状況でも、対応の仕方で結果が正反対になることを示した対義語です。
貧すれば鈍する(ひんすればどんする)
「貧すれば鈍する」は、貧乏になると生活に追われて心に余裕がなくなり、判断力が鈍り賢い行動ができなくなるという意味のことわざです。
「窮すれば通ず」が窮地から活路を見出すという希望的な内容なのに対し、「貧すれば鈍する」は困窮が能力低下を招くという警告的な内容になっています。
ただし、興味深いことに、2024年7月の記事では「貧すれば鈍する→窮すれば通ず」という連鎖も紹介されており、貧困が判断力を鈍らせて窮地を生むが、そこから活路が開けることもあるという解釈もされています。
対義語でありながら、人生の段階によっては連続性を持つ興味深い関係にある言葉です。
泣きっ面に蜂(なきっつらにはち)
「泣きっ面に蜂」は、不幸な状況にさらに悪いことが重なるという意味のことわざです。
「窮すれば通ず」が困難の先に光明があることを示すのに対し、こちらは困難が連鎖して状況が悪化するという悲観的な内容になっています。
泣いている顔を蜂に刺されるという比喩は、不運が続くときの辛さを表現しており、前向きな「窮すれば通ず」とは対照的な言葉と言えるでしょう。
人生には両方の局面があることを理解しておくことも大切ですね。
「英語」で言うと?
When you are in real trouble, you will find a way out.(本当の困窮に陥ったとき、あなたは出口を見つけるだろう)
この英語表現は、「窮すれば通ず」の意味を最も直接的に表した言い方です。
"real trouble"(本当の困難)という言葉で窮地を表し、"find a way out"(出口を見つける)で活路が開けることを示しています。
困難な状況が解決策を見つける原動力になるというニュアンスが伝わる表現ですね。
ビジネスの場面や、友人を励ます際に使える実用的な英語フレーズです。
Necessity is the mother of invention.(必要は発明の母)
これは英語圏で広く使われる有名なことわざで、「必要に迫られることで、人は創意工夫をする」という意味です。
「窮すれば通ず」と同じく、困難や制約があるからこそ新しいアイデアや解決策が生まれるという考え方を表しています。
科学技術の分野でよく引用される言葉で、イノベーションは必要性から生まれるという哲学を示しています。
プレゼンテーションやビジネス英語で使うと、教養を感じさせる表現になりますよ。
Adversity makes a man wise.(逆境は人を賢くする)
この英語表現は、困難な経験を通じて人は成長し、知恵を得るという意味です。
"adversity"(逆境)という言葉は、単なる困難を超えた厳しい状況を指し、"wise"(賢い)は知恵や洞察力を表します。
「窮すれば通ず」が道が開けることを強調するのに対し、こちらは困難を通じた人間的成長に焦点を当てた表現です。
自己啓発や教育の文脈でよく使われる格言的なフレーズで、深い意味を持つ言葉として知られています。
まとめ
「窮すれば通ず」は、中国の古典『易経』に由来する歴史あることわざで、行き詰まった状況でこそ思わぬ活路が開けるという前向きなメッセージを伝えています。
このことわざの本質は、困難や窮地が決して終わりではなく、むしろ変化と成長のきっかけになるという考え方にあります。
ビジネスシーンでは経営危機からの逆転、個人の人生では転職や人間関係の悩みなど、様々な場面で使える万能な励ましの言葉です。
類語の「ピンチはチャンス」や「災い転じて福となす」と合わせて覚えておくと、状況に応じて使い分けができるようになります。
また、対義語の「窮すれば濫す」を知ることで、困難な状況での心の持ち方の大切さも理解できるでしょう。
人生には必ず困難や挫折がありますが、「窮すれば通ず」の精神を持って前向きに取り組めば、必ず道は開けるはずです。
ぜひ、今日からこのことわざを実生活で使ってみてください。
困っている友人を励ますときにも、自分自身を奮い立たせるときにも、きっと力になってくれる言葉ですよ。