
「当たらずと雖も遠からず」ということわざ、聞いたことはありますよね。でも「雖も」って何?と思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。実は多くの人が「当たらずとも遠からず」という形で覚えているんですが、これって厳密には誤用なんです。
正確な意味や使い方、さらには由来を知ると、このことわざの深みがよくわかります。この記事では、「当たらずと雖も遠からず」の意味から由来、具体的な使い方、類語や対義語、英語表現まで、網羅的にご紹介していきますね。日常会話やビジネスシーンでも使える表現ですので、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
「当たらずと雖も遠からず」を理解するための基礎知識

読み方
「当たらずと雖も遠からず」は「あたらずといえどもとおからず」と読みます。
「雖も」の部分が少し読みづらいかもしれませんね。「雖も」は「いえども」と読み、「〜であっても」という意味を持つ古典的な表現なんです。現代の日常会話では「当たらずとも遠からず」という形で使われることが多いんですが、本来は「雖も」を使うのが正式な形とされています。
意味
「当たらずと雖も遠からず」は、ぴったり的中してはいないけれど、それほど的外れでもないことを意味します。
ボウリングで例えるなら、ストライクは取れなかったけれど、ピンが数本しか残っていない状態、というイメージですね。完璧ではないけれど、ほぼ正解に近い状態を表現する時に使われるんです。予想や推測が大きく外れていない時、核心に近い発言をした時などに、このことわざが使われますよね。
また、このことわざには「誠意を持って物事に取り組めば、完全に成就しなくても近い結果が得られる」というニュアンスも含まれているんです。単なる結果論だけでなく、努力や誠意の大切さも示唆している深い言葉なんですね。
語源と由来
「当たらずと雖も遠からず」の由来は、中国の古典『礼記』の「大学」という章にあるとされています。
原文では「心誠に之を求むれば、中らずと雖も遠からず」という言葉が記されているんですね。ここでの「中らず」は「あたらず」と読み、弓矢で的を射抜くことを意味しています。つまり、「誠実な心で物事を求めれば、たとえ的に当たらなくても、的から遠く離れることはない」という教えなんです。
この言葉は、もともと儒教の教えの中で語られていました。君主が誠実な心で国を統治すれば、たとえ完全な成功を収めなくても、それに近い良い結果が得られる、という文脈で使われていたんですね。弓の射抜きという具体的なイメージを使って、抽象的な「誠意の力」を説明しているところが印象的ですよね。
日本には中国の古典とともに伝わり、故事成語として定着しました。時代を経て「中らず」が「当たらず」に変化し、「雖も」の部分が「とも」に簡略化されることも多くなったんです。でも、本来の正式な形は「雖も」を使うのが正しいとされているんですね。
「使い方」がわかる「例文」3選

1:「彼の売上予測は当たらずと雖も遠からずだったね」
ビジネスシーンで使える例文ですね。
会社の会議などで、誰かが立てた売上予測が完全には的中しなかったけれど、大きく外れてもいなかった場合に使えます。たとえば、予測が1000万円で実際の売上が950万円だった場合など、ほぼ予想通りの結果になった時にこの表現が使われるんです。
この言い方には「完全には当たらなかったけれど、あなたの予測は信頼できるものだった」という評価のニュアンスも含まれていますよね。相手の努力を認めつつ、客観的な評価もできる、バランスの良い表現だと思います。
2:「あなたの推理、当たらずと雖も遠からずでしたよ」
日常会話で使える例文です。
友人との会話や、ミステリードラマを見ている時などに使えますね。誰かが犯人や真相を予想していて、実際の答えとは少し違ったけれど、核心に迫っていた場合に使います。「完全には正解じゃなかったけど、かなりいい線いってたよ」という意味合いで使えるんですね。
この表現には、相手の洞察力を褒める気持ちも込められていますよね。完全に外れていたわけではないことを伝えることで、相手のプライドを傷つけずに会話を続けられる、優しい言い回しだと思います。
3:「私の懸念は当たらずと雖も遠からずという結果になってしまった」
自分自身について振り返る時に使える例文です。
何か心配していたことが、完全にその通りにはならなかったけれど、似たような問題が起きてしまった時に使えますね。たとえば「このプロジェクトは予算オーバーになるのでは」と心配していて、実際には予算内に収まったものの納期が遅れてしまった、というような場合です。
自分の予感や直感が完全ではなかったけれど、何らかの問題を察知していたことを表現できます。自己分析や反省の文脈で使うと、深みのある表現になりますよね。
似た意味の「ことわざ」は?「類語」「言い換え」表現
正鵠を失わず(せいこくをうしなわず)
「正鵠を失わず」は、的の中心を外さない、つまり要点を捉えているという意味のことわざです。
「正鵠」とは弓の的の中心部分のことを指すんですね。「当たらずと雖も遠からず」と同様に弓矢の比喩を使っていますが、こちらの方がより正確に的を射ている印象があります。「当たらずと雖も遠からず」が「ほぼ当たっている」というニュアンスなのに対して、「正鵠を失わず」は「核心を捉えている」というより強い肯定を含んでいるんです。
図星を指す(ずぼしをさす)
「図星を指す」は、相手の急所や核心を正確に言い当てるという意味の慣用句です。
こちらも的や核心に関連する表現ですね。ただし「当たらずと雖も遠からず」が「完全には当たっていないけど近い」という謙虚なニュアンスなのに対し、「図星を指す」は完全に的中しているという意味になります。相手が隠していた本心や真実をズバリ言い当てた時に使われることが多いですよね。
八九不離十(はちきゅうふうりじゅう)
これは中国語の表現で、日本語に訳すと「十のうち八か九は当たっている」という意味になります。
「当たらずと雖も遠からず」と非常に近い意味を持つ表現なんです。完全に100%ではないけれど、80〜90%くらいは正しいというニュアンスですね。現代の中国語学習でもよく取り上げられる表現で、「ほぼ正解」「大体合っている」という意味で日常的に使われているんですよ。
的を外さず(まとをはずさず)
「的を外さず」は、要点を押さえている、重要なポイントを捉えているという意味の表現です。
これも弓矢の比喩を使った表現ですね。「当たらずと雖も遠からず」よりも肯定的で、実際に的に当たっているというニュアンスが強いです。会議やプレゼンテーションなどで、誰かの発言が核心を突いている時に「的を外していないね」という形で使われることが多いですよね。
「対義語」は?
的外れ(まとはずれ)
「的外れ」は、見当違いであること、ポイントがずれていることを意味する言葉です。
「当たらずと雖も遠からず」が「ほぼ当たっている」という肯定的な評価なのに対し、「的外れ」は完全に間違っている、核心から大きくずれているという否定的な評価になります。弓矢で例えるなら、的から大きく離れた場所に矢が飛んでいってしまった状態ですね。誰かの発言や予測が全く見当違いだった時に使われる表現です。
見当違い(けんとうちがい)
「見当違い」は、判断や推測が大きく間違っていることを意味します。
「当たらずと雖も遠からず」が近い結果を表すのに対し、「見当違い」は方向性そのものが間違っているという意味になります。たとえば、犯人を推理していて全く関係ない人を疑っていた場合などに使われますね。予測や推測が根本的に異なる方向を向いている時の表現です。
大外れ(おおはずれ)
「大外れ」は、予想や期待が大きく外れることを意味する言葉です。
「当たらずと雖も遠からず」が「少しだけずれている」程度なのに対し、「大外れ」は完全に、そして大きく間違っているという意味になります。天気予報が晴れと言っていたのに大雨が降った時や、競馬の予想が全く当たらなかった時などに使われる表現ですね。結果と予想の間に大きなギャップがある状態を表しています。
「英語」で言うと?
not far off the mark(的から遠くない)
「not far off the mark」は、的から遠くない、ほぼ正しいという意味の英語表現です。
これは「当たらずと雖も遠からず」に最も近い英語表現と言えるかもしれませんね。「mark」は的やゴールを意味する言葉で、「それほど離れていない」というニュアンスを伝えられます。ビジネスシーンでも日常会話でも使える便利な表現ですよ。
使い方の例としては、"Your estimate was not far off the mark."(あなたの見積もりは当たらずと雖も遠からずでしたね)という感じで使えます。
pretty close to it(かなり近い)
「pretty close to it」は、かなりそれに近い、ほぼ正解という意味の英語表現です。
「pretty」が「かなり」「結構」という意味で、「close」が「近い」という意味ですね。カジュアルな会話でよく使われる表現で、「ほぼ合っているよ」というフレンドリーなニュアンスを伝えられます。友人との会話などで気軽に使える表現ですよ。
"You're pretty close to it, but not exactly."(君の言っていることは当たらずと雖も遠からず、でも完全には正しくないね)という感じで使えます。
in the ballpark(大体合っている)
「in the ballpark」は、大体合っている、およその範囲内という意味の英語表現です。
これはアメリカの野球場(ballpark)から来た表現なんです。野球場の中にボールがあれば、少なくとも場外ではない、つまり「範囲内にある」という意味から、「大体正しい」「概ね合っている」というニュアンスで使われるようになりました。特にビジネスシーンで数字や見積もりについて話す時によく使われる表現ですね。
"Is this estimate in the ballpark?"(この見積もりは大体合っていますか?)というような使い方ができます。
まとめ
「当たらずと雖も遠からず」について、詳しく見てきましたがいかがでしたでしょうか。
このことわざは、完全には的中していないけれど、それほど的外れでもない状態を表す表現でしたね。中国の古典『礼記・大学』から来た故事成語で、弓矢の比喩を使って「誠意を持って物事に取り組めば、完全に成就しなくても近い結果が得られる」という深い意味も持っているんです。
正式には「当たらずと雖も遠からず」ですが、「当たらずとも遠からず」という形でも広く使われています。どちらの形でも意味は通じますが、正式な場面では「雖も」を使う方が良いかもしれませんね。
日常会話では「君の予想、当たらずと雖も遠からずだったね」というように、相手の推測や予測を穏やかに評価する時に使えますし、ビジネスシーンでは売上予測や市場分析の結果について話す時にも使えます。完全に正解ではなかったけれど、相手の努力や洞察力を認めたい時に、このことわざを使ってみてはいかがでしょうか。
類語として「正鵠を失わず」や「図星を指す」、対義語として「的外れ」や「見当違い」なども一緒に覚えておくと、表現の幅が広がりますよね。英語では "not far off the mark" や "pretty close to it" といった表現が使えるので、国際的なビジネスシーンでも活用できますよ。
ぜひ実際の会話の中で、この「当たらずと雖も遠からず」ということわざを使ってみてくださいね。きっと、あなたの表現力がさらに豊かになるはずですよ。