
「宵越しの銭は持たない」ということわざを耳にしたことはありますよね。なんとなく豪快でかっこいい響きがありますが、実際にどういう意味なのか、どんな場面で使えばいいのか、正確に説明するのは難しいかもしれませんね。
このことわざは江戸時代の人々の生き方を表す言葉なんですが、その背景には当時の社会事情や、江戸っ子たちの粋な心意気が込められているんですね。
この記事では、「宵越しの銭は持たない」の意味や由来を詳しく解説していきます。実際の使い方がわかる例文や、似た意味の類語、反対の意味を持つ対義語、さらには英語での表現まで、幅広くご紹介しますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
「宵越しの銭は持たない」を理解するための基礎知識

読み方
「宵越しの銭は持たない」は、「よいごしのぜにはもたない」と読みます。
「宵越し」という言葉が少し難しく感じるかもしれませんね。「宵」は夜のことで、「越し」は「越える」という意味ですから、合わせて「夜を越える」「翌日まで持ち越す」という意味になるんですね。
「銭」は昔のお金の単位で、今でいう「お金」のことを指しています。普段あまり使わない漢字ですが、「ぜに」と読むことを覚えておくとよいでしょう。
意味
「宵越しの銭は持たない」は、その日に稼いだお金はその日のうちに使い切ってしまい、翌日には持ち越さないという意味のことわざです。
このことわざは、お金に執着せず、気前がよくておおらかな性格を表しているんですね。貯金なんてせずに、今日稼いだお金は今日のうちに全部使ってしまう、そんな豪快で粋な生き方を象徴する言葉なんです。
もちろん、これは単なる浪費家という意味ではありませんよ。むしろ、明日は明日の風が吹くという楽観的な考え方や、お金よりも大切なものがあるという価値観を表しているとも言えるんですね。
また、このことわざには、お金を貯め込まずに社会に還元する、つまり経済を循環させるという意味合いも込められているかもしれません。江戸時代の庶民たちは、限られた収入を貯めるのではなく、日々の楽しみに使うことで、活気ある街づくりに貢献していたとも考えられますね。
語源と由来
「宵越しの銭は持たない」は、江戸時代の江戸っ子(江戸の庶民)の気質を表す言葉として生まれたとされています。
このことわざが生まれた背景には、江戸という街の特殊な事情があったんですね。実は、江戸は非常に火事が多い街だったんです。「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉があるくらい、江戸では頻繁に大火が発生していました。
記録によると、江戸では約5年に1回の頻度で大火が発生していたそうです。有名な明暦の大振袖火事(1657年)では、江戸の大半が焼失し、10万人以上の命が失われたとも言われていますよね。
こうした環境の中で、江戸の庶民たちは「どうせ貯めたお金も火事で失ってしまうかもしれない」と考えるようになったんですね。それならば、今あるお金は今日のうちに使い切ってしまおうという、ある意味で合理的な判断だったのかもしれません。
また、江戸には職人文化が根付いていて、腕のいい職人さんなら翌日も確実に仕事があるという安心感がありました。だからこそ、明日の収入を心配せずに、今日稼いだお金を気前よく使えたんですね。
さらに、この言葉には江戸っ子の「やせがまん」や「見栄」の要素も含まれているんです。実際には貧しくて貯金なんてできなかった庶民が、「貯金しないのは粋だからだ」と強がっていた面もあるとされています。
関西の商人文化では、お金を貯めて増やすことが美徳とされていましたが、江戸っ子たちは「そんなケチくさいことはしない」という対抗意識もあったようですね。「上方(関西)の連中とは違うんだ」という、江戸のプライドが込められた言葉でもあったわけです。
落語の名作『芝浜』などでは、こうした江戸っ子の気質が典型的に描かれていて、ちゃらんぽらんに見えながらも、どこか人間味のある魅力的なキャラクターとして登場するんですね。
「使い方」がわかる「例文」3選

1:「彼は宵越しの銭は持たない性格で、給料日の翌日にはもう財布が空っぽなんだよ」
これは日常会話でよく使われる例文ですね。お金の管理が苦手で、すぐに使い切ってしまう人のことを表現しています。
この場合、少し批判的なニュアンスが含まれているかもしれませんね。現代社会では、計画的な貯蓄が推奨されていますから、「宵越しの銭は持たない」生き方は、必ずしも褒められたものではないと捉えられることもあるんです。
ただし、この友人のことを愛嬌のある人物として語る場合には、「困ったものだけど憎めない」というような、少しユーモラスなトーンで使われることもありますよね。
2:「江戸っ子は宵越しの銭は持たないと言って、その日暮らしを楽しんでいたそうだ」
これは歴史や文化を説明する文脈での使い方ですね。江戸時代の庶民の暮らしぶりや価値観を紹介する際に使われる表現です。
この例文では、ことわざの本来の意味に近い使い方をしています。お金に執着しない潔さや、今を生きる姿勢を肯定的に捉えた表現になっているんですね。
歴史小説や時代劇の解説、あるいは日本の文化を紹介する場面などで、こうした使い方がされることが多いですよ。江戸の粋な文化を象徴する言葉として、ポジティブな文脈で登場するわけです。
3:「宵越しの銭は持たないというけれど、さすがに将来のために少しは貯金しておかないとね」
この例文は、ことわざを引用しながらも、現代的な価値観との対比を示していますね。
「宵越しの銭は持たない」という考え方は粋かもしれないけれど、実際には老後の資金や突然の出費に備えることも大切だよね、というバランスの取れた見方を表しています。
現代社会では、年金制度への不安や医療費の高騰などもあって、計画的な資産形成が重要視されていますよね。ですから、このことわざを「かつてはそういう時代もあったけれど」という歴史的な視点で振り返りつつ、今の時代に合った生き方を考える、そんな使い方も増えているんです。
似た意味の「ことわざ」は?「類語」「言い換え」表現
明日は明日の風が吹く
「明日は明日の風が吹く」は、将来のことをあれこれ心配せず、今日は今日を楽しく生きればよいという意味のことわざです。
「宵越しの銭は持たない」と非常に似た考え方を表していますよね。どちらも、楽観的で前向きな人生観を示している点では共通しているんです。
ただし微妙な違いもあります。「宵越しの銭は持たない」はお金に関する具体的な行動を表しているのに対して、「明日は明日の風が吹く」は人生全般に対する心構えを表現しているんですね。より広い意味で使える言葉と言えるでしょう。
また、「明日は明日の風が吹く」は『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラの有名なセリフ「Tomorrow is another day」の訳としても知られていて、世界共通の楽観主義を表す言葉として親しまれていますよね。
今日の一文、明日の百文
「今日の一文、明日の百文」は、今日持っている一文のお金は、明日の百文の価値があるという意味です。
これは一見、「今あるお金を大切にしよう」「貯蓄が大事」という意味に思えますが、実は違う解釈もあるんですね。今日持っているお金を使えば確実に価値が得られるけれど、明日まで持ち越しても価値が増えるわけではない、だから今使ってしまおうという考え方なんです。
こう考えると、「宵越しの銭は持たない」と似たような価値観を示していると言えますよね。どちらも、今を大切に生きることの重要性を説いている言葉なんです。
宵っ張りの朝寝坊
「宵っ張りの朝寝坊」は、夜遅くまで起きていて、朝は遅くまで寝ている人のことを指します。
計画性のない、その場の楽しみを優先する生き方という点で、「宵越しの銭は持たない」と共通する要素がありますね。
ただし、こちらは生活習慣に関する言葉で、どちらかというと批判的なニュアンスで使われることが多いんです。「宵越しの銭は持たない」が江戸っ子の粋として肯定的に語られることもあるのに対し、「宵っ張りの朝寝坊」はだらしない生活態度として批判される傾向があるという違いがありますね。
「対義語」は?
塵も積もれば山となる
「塵も積もれば山となる」は、どんなに小さなものでも、積み重ねれば大きなものになるという意味のことわざです。
これは「宵越しの銭は持たない」の対義語として最もわかりやすい表現ですね。わずかなお金でも貯め続けることで、やがて大きな財産になるという考え方を示しています。
江戸っ子の「今日のお金は今日使う」という姿勢とは真逆の、コツコツと努力を積み重ねる大切さを説く言葉なんです。現代の資産形成や貯蓄の重要性を語る際によく引用されることわざですよね。
関西の商人文化の中で育まれた価値観とも言えて、江戸っ子気質と上方商人気質の対比を象徴する言葉でもあるんですね。
備えあれば憂いなし
「備えあれば憂いなし」は、あらかじめ準備をしておけば、いざという時に心配することがないという意味です。
これも「宵越しの銭は持たない」とは対照的な考え方を示していますね。将来に備えて計画的に準備しておくことの大切さを説いているんです。
お金の面で言えば、貯蓄や保険、投資などを通じて将来のリスクに備えるという現代的な金銭感覚を表す言葉と言えるでしょう。「その日暮らし」ではなく、「計画的な人生設計」を重視する価値観ですね。
石橋を叩いて渡る
「石橋を叩いて渡る」は、丈夫な石橋でも念のため叩いて安全を確かめてから渡るという意味で、慎重すぎるほど用心深い性格を表す言葉です。
これも「宵越しの銭は持たない」の楽観的で大胆な姿勢とは正反対の、慎重で計画的な性格を表していますよね。
お金の使い方で言えば、リスクを徹底的に避け、確実な選択肢だけを選ぶという保守的な金銭感覚を示しています。投資よりも貯蓄、冒険よりも安全を選ぶタイプの人を表現する際に使われることが多いんですね。
「英語」で言うと?
Live for today(今日のために生きる)
「Live for today」は、将来のことを心配せず、今日という日を大切に生きるという意味の英語表現です。
これは「宵越しの銭は持たない」の精神に最も近い英語フレーズと言えるでしょう。明日のことは明日考えればいい、今この瞬間を楽しもうという前向きな生き方を表現しているんですね。
西洋文化の中でも、特に若者文化や自由な生き方を志向する人々の間で使われることが多い表現です。ロックミュージックの歌詞や映画のセリフなどでもよく登場する、ポピュラーなフレーズなんですよ。
Easy come, easy go(簡単に入ったものは簡単に出ていく)
「Easy come, easy go」は、直訳すると「簡単に来て、簡単に去る」という意味で、苦労せずに得たお金はあっという間になくなってしまうということを表しています。
これは「宵越しの銭は持たない」という行動パターンを描写する表現として使えますね。楽に稼いだお金は気前よく使ってしまう、という人間の心理を表しているんです。
ただし、この英語表現には「そういう生き方は良くない」という軽い戒めのニュアンスも含まれていることがあります。ですから、完全にポジティブな意味だけではなく、少し批判的な視点も含んでいる点に注意が必要ですね。
Spend money like water(水のようにお金を使う)
「Spend money like water」は、水を流すようにどんどんお金を使うという意味の慣用表現です。
これは「宵越しの銭は持たない」という行動そのものを表現する英語フレーズですね。お金を湯水のように使う、節約しないという様子を水に例えた表現なんです。
水が流れていくように、どんどんお金が出ていってしまう様子を視覚的にイメージできる表現ですよね。英語圏では日常会話でもよく使われる表現で、「彼はお金を水のように使う人だ」といった形で登場します。
ただし、この表現も基本的には浪費家を批判するニュアンスで使われることが多く、「宵越しの銭は持たない」の持つ「粋」や「潔さ」といったポジティブな側面は含まれていない点が異なりますね。
まとめ
「宵越しの銭は持たない」は、江戸時代の江戸っ子の粋な気質を表すことわざで、その日に稼いだお金はその日のうちに使い切るという生き方を示す言葉なんですね。
このことわざの背景には、頻繁に火事が起こる江戸の環境や、職人文化による仕事の安定性、さらには関西の商人文化への対抗意識など、さまざまな要因があったことがわかりましたよね。
現代では、計画的な貯蓄が重視される時代ですから、「宵越しの銭は持たない」という生き方は必ずしも推奨されないかもしれません。でも、お金に執着しすぎず、今を楽しむという姿勢には学ぶべきものもあるのではないでしょうか。
大切なのは、「塵も積もれば山となる」という計画性と、「宵越しの銭は持たない」という今を楽しむ心のバランスかもしれませんね。
歴史や文化を語る場面、あるいは誰かの金銭感覚を表現する際に、このことわざを使ってみると、会話がより豊かになるかもしれませんよ。ぜひ日常会話で使ってみてくださいね。