
「牛耳を執る」ということわざ、耳にしたことはあっても、正確な意味や使い方を説明するとなると少し迷ってしまいますよね。
「牛」と「耳」という組み合わせも独特ですし、一体どんな由来があるのか気になりませんか?
実はこのことわざ、中国の古典に由来する奥深い表現なんですね。ビジネスシーンや日常会話でも使える場面が意外と多いことわざなので、正しい意味を知っておくときっと役に立つはずです。
この記事では、「牛耀を執る」の意味・由来・例文はもちろん、類語や対義語、英語表現まで幅広くご紹介していきますね。読み終わる頃には、自信を持って使えるようになっているかもしれませんよ。
「牛耳を執る」を理解するための基礎知識
まずは「牛耳を執る」という言葉の基本的な情報から見ていきましょう。読み方や正確な意味、そして興味深い由来について詳しく解説していきますね。
読み方
「牛耳を執る」は「ぎゅうじをとる」と読みます。
「牛耳」の部分は「ぎゅうじ」と音読みで、「執る」は「とる」と訓読みですね。音読みと訓読みが混ざった読み方なので、最初は少し戸惑うかもしれませんが、何度か声に出して読んでみるとすぐに覚えられますよ。
ちなみに、「牛耳」を「うしみみ」と読んでしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、ことわざとしては「ぎゅうじ」が正しい読み方なんですね。
意味
「牛耳を執る」は、ある団体や組織などの中心となって、自分の意のままに物事を進めることを意味します。つまり、主導権を握るという意味なんですね。
ただ形式上のリーダーというだけではなく、実質的に組織やグループを動かす力を持っている状態を指すんです。
たとえば会社の会議で、肩書は部長さんでも実際に決定権を持って議論を進めているのは別の人だったりすることってありますよね。そんなとき、実際に物事を動かしている人が「牛耳を執っている」と表現できるわけです。
この表現には、単にリーダーシップを取るというだけでなく、実質的な支配力や影響力を持っているというニュアンスが含まれているんですね。だからこそ、ただの役職や肩書ではなく、本当の意味での主導権を表す言葉として使われているんです。
語源と由来
「牛耳を執る」の由来は、中国の春秋戦国時代にまでさかのぼります。歴史好きな方にはたまらない背景があるんですよね。
このことわざは『春秋左氏伝』という中国の古典文献に記録されている故事から生まれました。定公八年と哀公十七年の条に、その元となるエピソードが記載されているんですね。
では、なぜ「牛の耳」なのでしょうか?
古代中国では、諸侯たちが同盟を結ぶときに特別な儀式を行っていました。その儀式では、牛の耳を裂いて、その血を用いて誓いを交わすという厳粛な作法があったんですね。
この儀式において、牛の耳を裂くという重要な役目を担当するのは、同盟の盟主となる人物でした。つまり、「牛の耳を執る」=「盟主になる」=「主導権を握る」という意味の連想が生まれたというわけなんです。
考えてみると、血を使った誓いの儀式という厳粛な場面で、その中心的な役割を担うわけですから、その人物が実質的なリーダーであることは誰の目にも明らかですよね。
こうした古代の儀式から生まれた表現が、現代の私たちの言葉として残っているって、何だか不思議な感じがしませんか?歴史のロマンを感じる由来ですよね。
「使い方」がわかる「例文」3選

それでは実際に「牛耳を執る」をどのように使えばいいのか、具体的な例文を見ていきましょう。ビジネスシーンや日常会話など、さまざまな場面での使い方をご紹介しますね。
1:「彼は創業メンバーの一人として、今でも会社の重要な決定において牛耳を執っている」
この例文は、ビジネスシーンでの使用例ですね。
創業メンバーという立場の人が、長年の経験と影響力を持って会社の方向性を実質的に決めているという状況を表しています。
もしかしたら現在の肩書は会長や顧問かもしれませんし、あるいは特定の役職についていないかもしれません。でも、重要な決定の場面では必ずその人の意見が通るような状況ってありますよね。
こういった実質的な支配力や決定権を持っている状態を表現するのに、「牛耳を執る」はぴったりの言葉なんです。
会社組織だけでなく、プロジェクトチームや委員会などでも同じように使えますよ。
2:「業界団体の会長は名目上は田中さんだが、実際に牛耳を執っているのは副会長の佐藤さんだ」
こちらの例文は、形式と実質の違いを明確に示していますね。
組織の中では、役職上のトップと実質的なトップが異なることって意外とあるものです。会長という肩書はあっても、実際の運営や意思決定を行っているのは別の人物、というケースですね。
「牛耳を執る」という表現を使うことで、表向きの役職と実際の権力の違いを効果的に表現できるんです。
こうした状況は政治の世界でもよく見られますよね。明治時代の日本政府では、旧長州藩士と旧薩摩藩士が実質的に牛耳っていたと言われていますし、現代でも派閥の領袖が実権を握っているような場面で使える表現です。
3:「彼女は学生時代から友人グループの中で牛耳を執るタイプで、いつも遊びの計画を立てていた」
この例文は、もう少しカジュアルな日常場面での使用例ですね。
友人グループの中で自然とリーダーシップを発揮して、みんなの予定や活動を主導する人っていますよね。そういう人物を表現するときにも「牛耳を執る」は使えるんです。
ただし、この場合はビジネスや政治の場面ほど重々しい意味合いではなく、「グループの中心人物として活動を引っ張っている」というニュアンスになります。
北杜夫さんの小説『楡家の人びと』(1962~64年)でも「常に遊び仲間の間でも牛耳をとっていた」という表現が使われていて、文学作品でも親しまれてきた使い方なんですね。
友人関係、サークル活動、趣味のグループなど、私たちの身近な場面でも使える表現だということがわかりますよね。
似た意味の「ことわざ」は?「類語」「言い換え」表現
「牛耳を執る」と似た意味を持つことわざや表現は他にもいくつかあります。それぞれ微妙にニュアンスが違うので、場面に応じて使い分けられるといいですよね。
采配を振る(さいはいをふる)
「采配を振る」は、自ら先頭に立って物事の指揮や運営にあたることを意味する表現です。
もともと「采配」は戦場で指揮官が持つ指揮棒のことで、それを振って軍勢を指揮することから来ているんですね。
「牛耳を執る」との違いは、「采配を振る」の方がより積極的に指揮を執っている様子を表すという点です。組織やプロジェクトで全体の方向性を定め、具体的に指示を出して動かしていくイメージがありますね。
たとえば「彼がプロジェクトの采配を振っている」と言えば、積極的にチームを率いて指揮している様子が伝わります。一方「牛耳を執る」は、もう少し支配的・権力的なニュアンスが強いかもしれませんね。
仕切る
「仕切る」は、会の段取りや現場の采配を任されることを意味する、より日常的な表現です。
「牛耳を執る」や「采配を振る」と比べると、かなりカジュアルな言い方ですよね。「今日の飲み会は田中さんが仕切ってくれる」「イベントの運営を仕切る」といった使い方をします。
この表現は実務的な意味合いが強いんですね。権力や支配というより、実際の段取りや調整を担当するというニュアンスです。
ですから、「牛耳を執る」が持つような「実質的な支配力」という意味合いは薄くて、もっと実務的で中立的な表現と言えるでしょう。友人同士の会話やカジュアルなビジネスシーンでは、こちらの方が使いやすいかもしれませんね。
主導権を握る
「主導権を握る」は、物事を進める上での中心的な立場や決定権を持つことを意味します。
実は「牛耳を執る」の意味を説明するときに使われるくらい、ほぼ同じ意味の表現なんですね。ことわざではなく一般的な慣用表現なので、ビジネス文書や報道などでも広く使われています。
「牛耳を執る」よりもストレートで現代的な表現と言えるでしょう。「競争で主導権を握る」「交渉の主導権を握る」といった使い方ができますね。
どちらを使うかは場面次第ですが、フォーマルな文章やプレゼンテーションでは「主導権を握る」の方が理解されやすいかもしれません。一方、文学的・教養的なニュアンスを出したいときには「牛耳を執る」が効果的ですよ。
イニシアチブを取る
「イニシアチブを取る」は、英語の「take the initiative」から来たカタカナ表現ですね。率先して行動を起こし、物事を主導することを意味します。
ビジネスシーンでよく使われる表現で、特に国際的な環境やIT業界などでは頻繁に耳にするかもしれません。
「牛耳を執る」との違いは、「イニシアチブを取る」の方が権力的なニュアンスが弱く、前向きな主導性を表すという点です。支配するというより、積極的にリードするというイメージですね。
「新技術開発でイニシアチブを取る」「環境問題でイニシアチブを取る」といった使い方をして、先進的・積極的な姿勢を表現することが多いんです。
「対義語」は?
「牛耳を執る」とは反対の意味を持つことわざや表現も見ていきましょう。主導権を握る状態の対極にある状況を表す言葉ですね。
尻馬に乗る(しりうまにのる)
「尻馬に乗る」は、他人の意見や行動に安易に同調して、自分の意思を持たずについていくことを意味することわざです。
主導権を握って自分の意のままに物事を進める「牛耳を執る」とは、まさに正反対の姿勢ですよね。
もともとは、先を行く馬の尻について行く後続の馬から来た表現で、主体性のない追随する態度を表しているんですね。
「みんなが言っているから」「流行っているから」と深く考えずについていく様子を表すときに使われます。批判的なニュアンスを含むことが多いので、使う場面には注意が必要ですよ。
人の後塵を拝する(ひとのこうじんをはいする)
「人の後塵を拝する」は、他人の後ろについて行くこと、他人に遅れをとることを意味する表現です。
「後塵」とは馬や車が通った後に立つ土ぼこりのことで、その土ぼこりを浴びるほど後ろを走っているという状況から来ているんですね。ちょっと文学的で格調高い表現ですよね。
主導権を握って先頭を走る「牛耳を執る」とは対照的に、後続の立場に甘んじている状態を表します。
ビジネスの場面では「競合他社の後塵を拝している」といった使い方をして、市場での遅れや劣勢を表現することがありますね。やや謙遜や自己批判のニュアンスを含む表現と言えるでしょう。
言いなりになる
「言いなりになる」は、他人の言うことをそのまま受け入れて従うことを意味する、より日常的な表現ですね。
自分の意思で主導権を握る「牛耳を執る」とは完全に逆の立場で、他人に支配されている状態を表します。
この表現は、ことわざというより一般的な慣用表現ですが、わかりやすくて使いやすいですよね。「上司の言いなりになる」「親の言いなりになる」といった使い方をします。
ただし、かなりネガティブなニュアンスがあるので、人に対して使うときには気をつけた方がいいかもしれません。自分の主体性がない状態を批判的に表現する言葉なんですね。
「英語」で言うと?
「牛耳を執る」を英語で表現するにはどうすればいいでしょうか。日本独特の表現ですが、同じような意味を持つ英語フレーズがいくつかあるんですよ。
take the reins(手綱を取る)
「take the reins」は、直訳すると「手綱を取る」という意味で、馬の手綱を握って馬を操ることから来ている表現です。
これは「牛耳を執る」ととても似た発想ですよね。動物を使った比喩表現という点でも共通していて興味深いんです。
英語圏では組織やプロジェクトの主導権を握ること、リーダーシップを取ることを表す一般的なフレーズとして使われています。
例文としては、「She took the reins of the company after her father retired.」(彼女は父親の引退後、会社の舵取りをした)といった使い方ができますね。ビジネスシーンでもよく使われる自然な表現なんですよ。
call the shots(指示を出す)
「call the shots」は、直訳すると「射撃の合図をする」という意味で、物事の決定権を持ち、指示を出す立場にあることを表します。
もともとはビリヤードやダーツなどのゲームで、どこを狙うか宣言することから来ているそうですよ。そこから転じて、決定権を持って物事を動かすことを意味するようになったんですね。
「牛耳を執る」が持つ「実質的な支配力を持つ」というニュアンスにかなり近い表現と言えるでしょう。
「In this project, Sarah calls the shots.」(このプロジェクトではサラが主導権を握っている)のように使います。カジュアルな場面でも使える、わかりやすい表現ですね。
have the upper hand(優位に立つ)
「have the upper hand」は、直訳すると「上の手を持つ」で、競争や交渉において優位な立場にあること、主導権を持っていることを意味します。
この表現は特に競争的な状況や対立する関係性の中で使われることが多いんですね。ビジネスの交渉や市場での競争などで「有利な立場にある」「支配的な地位にある」という意味で使われます。
「牛耳を執る」の持つ「実質的な支配力」というニュアンスを表現するのに適していますよ。
「Our competitor has the upper hand in the smartphone market.」(スマートフォン市場では競合他社が主導権を握っている)といった使い方ができますね。国際ビジネスの場面でも頻繁に使われる実用的な表現です。
まとめ
「牛耳を執る」ということわざについて、意味から由来、使い方まで詳しく見てきましたね。
このことわざは「主導権を握って、自分の意のままに物事を進める」という意味を持ち、中国の春秋戦国時代の盟約儀式から生まれた歴史ある表現でしたね。単なる形式上のリーダーではなく、実質的な支配力や影響力を持つ立場を指すという点がポイントです。
「執る」という漢字には、単に地位があるだけでなく、自ら動いて主導する姿勢や責任を持って采配をふるう態度が含まれているということも覚えておきたいですね。
類語としては「采配を振る」「仕切る」「主導権を握る」などがあり、それぞれ微妙にニュアンスが異なります。場面に応じて使い分けられるといいですよね。
ビジネスシーンでも日常会話でも使える表現なので、ぜひ機会があったら使ってみてください。ただし、やや支配的なニュアンスを含む表現でもあるので、使う相手や場面には少し配慮が必要かもしれませんね。
古代中国から現代まで受け継がれてきた知恵の言葉を、私たちの日常でも活かしていけるといいですよね。言葉の背景を知ることで、より深く豊かなコミュニケーションができるようになるのではないでしょうか。
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