
「鹿を指して馬と為す」ということわざ、聞いたことはあるけれど正確な意味を説明しようとすると難しいですよね。
なんとなく「間違ったことを言う」みたいなイメージはあるけれど、具体的にどんな場面で使うのか、どんな背景があるのか、気になっている方も多いかもしれませんね。
このことわざには実は、中国の古代王朝における壮絶な権力闘争の物語が隠されているんですね。明らかに間違っていることを、権力を背景に無理やり正しいと押し通す行為を表す、とても深い意味を持つことわざなんです。
この記事では、「鹿を指して馬と為す」の意味や由来はもちろん、実際の使い方がわかる例文、似た意味の類語、反対の意味を持つ対義語、さらには英語でどう表現するかまで、網羅的に解説していきますね。
読み終わる頃には、このことわざをしっかり理解して、日常生活でも自信を持って使えるようになっているはずですよ。
「鹿を指して馬と為す」を理解するための基礎知識

まずは基本からしっかり押さえていきましょうね。
読み方
「鹿を指して馬と為す」は「しかをさしてうまとなす」と読みます。
少し長いことわざですが、一つひとつの漢字は難しくないので、覚えやすいかもしれませんね。
「為す」という部分は「なす」と読むことに注意してください。「する」という意味を持つ古い言い回しなんですね。
意味
「鹿を指して馬と為す」とは、明らかに間違っていることを、権力や威圧を背景にして強引に正しいと押し通すことを意味します。
もう少しわかりやすく言うと、「誰が見ても鹿なのに、『これは馬だ』と言い張って周囲を従わせる」ような行為ですよね。
つまり、道理に反することを力ずくで押し通したり、人を欺いたりする行為を批判する際に使われることわざなんです。
「白を黒と言い張る」という表現と似ていますが、このことわざには特に「権力による威圧」というニュアンスが強く込められているんですね。
現代社会でも、政治の場面や会社組織などで、力を持つ人が明らかな誤りを押し通そうとする場面って、残念ながら見られることがありますよね。
語源と由来
このことわざには、中国古代の秦王朝における権力闘争の物語が元になっているんです。
紀元前3世紀、中国を初めて統一した秦の始皇帝が亡くなった後の出来事が、その舞台となります。
始皇帝の死後、趙高(ちょうこう)という宦官が、幼い二世皇帝(胡亥)を操って権力を握ろうと企んでいました。趙高は自分がどれだけの権力を持っているのか、誰が自分に従い、誰が反対するのかを試したいと考えたんですね。
ある日、趙高は皇帝に鹿を献上しながら「これは馬でございます」と言い放ちました。
若い皇帝は戸惑いながら「これは鹿ではないか」と言いましたが、趙高は周りの臣下たちに「これは馬か鹿か」と尋ねたんです。
すると、趙高を恐れる臣下たちの多くは「馬でございます」と答えました。一方で、正直に「鹿です」と答えた臣下もいたのですが、趙高はその後、正直に答えた人々を次々と粛清してしまったんですね。
この恐ろしい出来事は、中国の歴史書『史記』の「秦始皇本紀」に記録されています。司馬遷が書いたこの歴史書は、中国史を学ぶ上で最も重要な文献の一つなんですよ。
中国語では「指鹿為馬(しろくいば)」と書かれ、日本語では「鹿を指して馬と為す」と訳されて、故事成語として伝わってきたんですね。
この故事は、権力者が自分の地位を確かめるために、あえて明らかな嘘を言って周囲を試し、反対する者を排除していくという、権力の恐ろしさを象徴する物語として語り継がれているんです。
使い方がわかる例文3選

それでは実際にどんな場面で使われるのか、具体的な例文を見ていきましょうね。
1:「軍事力で他国の領土を占領し、一方的に選挙を実施して自国領だと主張するのは、鹿を指して馬と為す行為としか言いようがない」
この例文は、国際政治の場面での使い方ですね。
明らかに国際法に反する行為を、力を背景に正当化しようとする状況を批判しています。
誰が見ても不当なことを、軍事力という圧倒的な力で押し通そうとする姿勢が、まさに「鹿を指して馬と為す」に当てはまるわけです。
このように、政治や軍事の文脈で権力による無理強いを批判する際に、このことわざはよく使われるんですね。
2:「明らかなミスなのに、上司の立場を利用して『これは戦略的判断だった』と言い張るのは、鹿を指して馬と為すようなものだ」
こちらはビジネスシーンでの例文ですね。
会社組織でも、権力を持つ人が自分の失敗を認めずに、無理な理屈で正当化しようとする場面ってありますよね。
誰もがミスだとわかっているのに、地位や立場を利用して強引に「正しかった」と主張する行為を批判する表現として使えるんです。
このことわざを使うことで、そうした行為の不当性をより強く印象づけることができますね。
3:「競合他社の製品が優れているという事実を認めず、データを歪曲してまで自社製品が最高だと主張するのは、まさに鹿を指して馬と為す宣伝だ」
この例文は、マーケティングや広告の場面での使い方を示しています。
明らかな事実に反することを、自社の利益のために強引に主張する行為ですよね。
誇大広告や虚偽の情報を流すことは、現代では法律でも規制されていますが、それでも事実を捻じ曲げて自分たちの都合の良いように主張する姿勢を批判する際に、このことわざが効果的に使えるんです。
これらの例文からわかるように、「鹿を指して馬と為す」は単に嘘をつくというよりも、何らかの力や権威を背景に、明白な誤りを押し通す行為を指すことわざなんですね。
似た意味のことわざは?類語・言い換え表現
「鹿を指して馬と為す」と似た意味を持つことわざや表現を見ていきましょう。微妙なニュアンスの違いも理解できると、より豊かな表現力が身につきますよね。
白を黒と言う
「白を黒と言う(しろをくろという)」は、明らかな事実を正反対に言い張ることを意味します。
「鹿を指して馬と為す」と非常に近い意味を持っていますが、こちらは権力による威圧というニュアンスが必ずしも含まれない点が違いなんですね。
単純に事実を捻じ曲げる行為全般に使える表現なので、日常会話でも使いやすいかもしれませんね。
例えば「約束を破っておきながら『守った』と白を黒と言うようなことはやめてほしい」というように使えます。
鷺を烏と言う
「鷺を烏と言う(さぎをからすという)」も、白い鷺を黒い烏だと言い張るという意味で、「白を黒と言う」とほぼ同じ意味を持ちます。
こちらも明白な事実に反することを主張するという点では「鹿を指して馬と為す」と似ていますね。
ただし、このことわざも権力による強制というニュアンスは薄く、単に事実を歪めることを指す表現として使われることが多いんです。
牽強付会
「牽強付会(けんきょうふかい)」は、道理に合わないことを無理やり理屈をつけて自分の都合の良いように解釈することを意味します。
これも「鹿を指して馬と為す」に近い意味を持っていますが、こじつけや無理な理屈という側面がより強調されるんですね。
例えば「その解釈は牽強付会もいいところだ」というように、無理な論理展開を批判する際に使われます。
「鹿を指して馬と為す」が力による押し付けを強調するのに対して、「牽強付会」は論理のねじ曲げを強調する表現と言えるかもしれませんね。
我田引水
「我田引水(がでんいんすい)」は、自分の田んぼだけに水を引くという意味から、自分の都合の良いように物事を解釈したり、利益を独占したりすることを表します。
「鹿を指して馬と為す」ほど強い権力による強制というニュアンスはありませんが、事実を自分に都合よく歪めるという点では共通していますね。
ビジネスシーンで「それは我田引水な解釈だ」というように、相手の身勝手な主張を批判する際に使える表現ですよ。
対義語は?
次は反対の意味を持つことわざを見ていきましょう。対義語を知ることで、「鹿を指して馬と為す」の意味がより明確になりますよね。
正直は一生の宝
「正直は一生の宝(しょうじきはいっしょうのたから)」は、正直であることが何よりも大切な価値だという意味のことわざです。
嘘をつかず、事実をありのままに伝える姿勢を称賛する表現で、事実を捻じ曲げる「鹿を指して馬と為す」とは真逆の概念ですよね。
このことわざは、たとえ不利な状況でも正直に生きることの大切さを教えてくれるんですね。
趙高の故事で正直に「鹿です」と答えた臣下たちは命を落としましたが、歴史的には彼らの誠実さが評価されているんです。
至誠天に通ず
「至誠天に通ず(しせいてんにつうず)」は、誠実な心は必ず相手に伝わり、天にも通じるという意味です。
真心を持って誠実に行動することの大切さを説いたことわざで、権力や嘘で物事を押し通す「鹿を指して馬と為す」とは対極にある考え方ですね。
短期的には力で押し通すことができても、長期的には誠実さが勝るという教訓を含んでいるんです。
嘘つきは泥棒の始まり
「嘘つきは泥棒の始まり(うそつきはどろぼうのはじまり)」は、嘘をつく習慣は悪事への第一歩だという警告のことわざです。
小さな嘘から始まって、やがて大きな悪事を働くようになるという意味で、嘘をつくことの危険性を教えてくれますよね。
「鹿を指して馬と為す」のように明白な嘘を押し通す行為は、まさにこのことわざが警告する悪の道の典型例と言えるかもしれませんね。
英語で言うと?
最後に、「鹿を指して馬と為す」を英語でどう表現するか見ていきましょう。国際的なコミュニケーションでも使えると便利ですよね。
Call a deer a horse(鹿を馬と呼ぶ)
直訳的な表現として「Call a deer a horse」という言い方があります。
これは中国の故事をそのまま英語にした表現なので、中国文化に詳しい人であれば意味が通じるかもしれませんね。
ただし、一般的な英語圏の人には馴染みが薄い表現なので、使う際には説明が必要かもしれません。
例えば「He is calling a deer a horse, just like the ancient Chinese story of Zhao Gao」(彼は趙高の古代中国の物語のように、鹿を馬と呼んでいる)というように、背景説明を加えると良いでしょうね。
Call black white(黒を白と呼ぶ)
より一般的な英語表現としては「Call black white」があります。
明らかな事実を正反対に言い張るという意味で、「鹿を指して馬と為す」のニュアンスをよく表していますね。
日本語の「白を黒と言う」と同じ発想の表現なので、わかりやすいですよね。
「Don't try to call black white」(白を黒と言おうとしないで)というように使えます。
ビジネスシーンでも政治的な議論でも、広く使える表現なんですよ。
Twist the truth(真実を捻じ曲げる)
「Twist the truth」は、真実を捻じ曲げるという意味の英語表現です。
これは事実を歪めて自分の都合の良いように主張する行為を指し、「鹿を指して馬と為す」の本質をうまく捉えていますね。
「He's twisting the truth to suit his agenda」(彼は自分の目的に合わせて真実を捻じ曲げている)というように使えます。
現代社会で頻繁に見られる行為を表現する、実用的なフレーズと言えるでしょう。
Abuse one's power to distort facts(権力を濫用して事実を歪める)
より詳しく説明したい場合は「Abuse one's power to distort facts」という表現も使えます。
これは権力を濫用して事実を歪めるという意味で、「鹿を指して馬と為す」の持つ「権力による強制」というニュアンスまで含んでいるんですね。
「The dictator abused his power to distort facts」(独裁者は権力を濫用して事実を歪めた)のように、政治的な文脈で特に有効な表現ですよ。
まとめ
「鹿を指して馬と為す」について、詳しく見てきましたがいかがでしたか?
このことわざは、明らかに間違っていることを権力や威圧を背景に強引に正しいと押し通すことを意味し、中国古代の秦王朝における趙高の権力闘争の物語に由来しているんでしたね。
使い方としては、政治や社会、ビジネスの場面で、力を持つ者が事実を捻じ曲げて自分の主張を押し通そうとする行為を批判する際に効果的なんです。
類語には「白を黒と言う」「鷺を烏と言う」などがあり、対義語には「正直は一生の宝」「至誠天に通ず」などがありましたよね。
現代社会でも残念ながら、権力を持つ人が事実を歪めて自分の都合の良い主張をする場面は見られます。
でも、このことわざを知っていることで、そうした不当な行為を的確に批判し、正しい判断をする助けになるのではないでしょうか。
歴史は繰り返すと言いますが、2000年以上前の中国の故事が現代にも通じる教訓を含んでいるというのは、本当に興味深いですよね。
ぜひこのことわざを覚えて、適切な場面で使ってみてくださいね。きっとあなたの表現力がより豊かになるはずですよ。
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