
「危急存亡の秋」という言葉を聞いたことはありますよね。ニュースやビジネスシーンで使われることもある表現ですが、正確な意味や由来について聞かれると、ちょっと自信がないという方も多いかもしれませんね。
この表現、実は中国の古典『三国志』から生まれた故事成語なんですね。約1800年も前の言葉が、今でも私たちの言葉として使われているって、とても興味深いと思いませんか?
この記事では、「危急存亡の秋」の意味や由来、実際の使い方を例文とともに詳しく解説していきます。類語や対義語、英語での表現方法までご紹介しますので、この記事を読み終わるころには、この言葉を自信を持って使えるようになっているはずですよ。
「危急存亡の秋」を理解するための基礎知識

読み方
「危急存亡の秋」は「ききゅうそんぼうのとき」と読みます。
ここで注意したいのが、最後の「秋」という字ですよね。普段なら「あき」と読むこの字を、「とき」と読むところがポイントなんですね。
「秋」を「とき」と読むのは少し不思議に感じるかもしれませんが、これにはちゃんとした理由があります。後ほど由来のところで詳しくお話ししますので、楽しみにしていてくださいね。
意味
「危急存亡の秋」とは、危険や災難が差し迫っていて、そのまま存続できるか、それとも滅びてしまうかの瀬戸際という意味を持つ言葉なんですね。
もう少し詳しく見ていきましょう。この言葉は四つの漢字に分解できますよね。
- 危急:危険が間近に迫っている状態
- 存亡:生き残るか滅びるか、存続するか消滅するか
- 秋(とき):大切な時期、重要な局面
つまり、「今まさに、生きるか死ぬかの重大な局面を迎えている」という、かなり緊迫した状況を表現する言葉なんですね。現代風に言えば「エマージェンシー(緊急事態)」に近い感覚かもしれません。
「危険が迫っているよ、このままだと大変なことになるよ」という警告のニュアンスが込められているんですね。
語源と由来
「危急存亡の秋」の由来は、中国の古典『三国志』の中の「出師の表」(すいしのひょう)という文章から来ているんですね。これは西暦227年に書かれた、とても有名な文書なんです。
では、その背景を少し詳しく見ていきましょう。
時は三国時代。中国は魏・呉・蜀の三つの国に分かれて争っていました。その中の蜀という国の丞相(今でいう首相のような立場)だったのが、諸葛孔明(しょかつこうめい)という人物だったんですね。
孔明さんは、若い君主である劉禅(りゅうぜん)に対して、北方の敵国・魏を討つために出陣する決意を表明する文書を提出しました。それが「出師の表」なんです。
その中で孔明さんは、こう述べたとされています。
「今天下三分して、益州疲弊せり。此れ誠に危急存亡の秋なり」
これを現代語に訳すと、「今、天下は三つに分かれており、益州(蜀の領土)は疲弊しています。これはまさに存続するか滅びるかの重大な時期です」という意味になるんですね。
長い戦乱で国力が衰えていた蜀の危機的状況を、若い君主にしっかりと認識してもらうために使われた表現だったんです。孔明さんの切迫した思いが伝わってきますよね。
さて、ここで気になるのが「なぜ秋という字を使うのか」という点ですよね。
実は、秋は穀物の収穫時期であり、一年の中で最も大切な時期とされていたんですね。収穫がうまくいくかどうかで、その年の生活が決まってしまう。つまり「秋」という字には、「重要な時期」「決定的な時」という意味が込められているんです。
だから季節としての秋ではなく、「とき」と読むわけなんですね。納得していただけましたか?
この「出師の表」は、中国の歴史の中でも名文として知られており、多くの人々に読み継がれてきました。そこから生まれた「危急存亡の秋」という表現も、日本に伝わって広く使われるようになったんですね。
「使い方」がわかる「例文」3選

では、「危急存亡の秋」を実際にどのように使うのか、具体的な例文を見ていきましょう。使い方のイメージが湧いてくると思いますよ。
1:「5年前、我が社は危急存亡の秋と言っても過言ではない状態だった」
これはビジネスシーンでの使用例ですね。
企業が経営危機に陥っていた過去を振り返る際に使われています。「会社が潰れるかもしれない」という瀬戸際の状況だったことを、格調高く表現しているんですね。
この例文のように、「危急存亡の秋」は主に組織や集団、国家などについて使われることが多いんです。個人の小さな問題について使うのは、ちょっと大げさな印象を与えてしまうかもしれませんね。
「それを救ったのは、当時社長に就任した彼の経営手腕だ」と続けることで、危機を乗り越えたストーリーとして語られることも多いですよね。
2:「少子高齢化が進む今、日本は危急存亡の秋を迎えている」
これは社会問題について語る際の例文ですね。
国家レベルの重大な課題に直面している状況を表現しています。人口減少という構造的な問題が、国の将来を左右する重大な局面であることを強調しているんですね。
このように、「危急存亡の秋」は現在進行形の危機について使うこともできます。過去の出来事だけでなく、まさに今直面している問題について警鐘を鳴らす際にも効果的な表現なんですよ。
ニュースや論評、スピーチなどでも使われることがある表現ですので、聞き覚えがある方も多いかもしれませんね。
3:「チームは連敗が続き、まさに危急存亡の秋だったが、新監督の就任で息を吹き返した」
これはスポーツの世界での使用例ですね。
プロスポーツチームが降格の危機に瀕していたり、存続自体が危ぶまれる状況を表現しています。こういったシーンでも「危急存亡の秋」は自然に使えるんですね。
この例文のポイントは、危機的状況からの復活のストーリーとセットで使われているところです。「危急存亡の秋」という言葉は、単に絶望的な状況を嘆くだけでなく、そこからどう立ち直ったか、あるいはどう立ち向かうかという文脈で使われることが多いんですね。
まさにリーダーシップが試される場面で使われる表現だと言えるでしょう。
似た意味の「ことわざ」は?「類語」「言い換え」表現
「危急存亡の秋」と似た意味を持つ表現はいくつかありますよね。それぞれ微妙にニュアンスが違うので、使い分けができると表現の幅が広がりますよ。
存亡の機
「存亡の機(そんぼうのき)」は、生き残るか滅びるかの分かれ目という意味ですね。
「危急存亡の秋」から「危急」が抜けた形に近いかもしれません。こちらの方が少しシンプルで、使いやすい表現かもしれませんね。
「機」には「きっかけ」「チャンス」「タイミング」という意味もあるため、単に危機というだけでなく、運命の分岐点というニュアンスが強く出るんですね。
「この決断が我が社の存亡の機となる」のように使われます。
一触即発
「一触即発(いっしょくそくはつ)」は、ちょっと触れただけで爆発しそうなほど、非常に緊迫した状態を表す四字熟語ですね。
「危急存亡の秋」が組織の存続という長期的な視点を含むのに対して、「一触即発」は今まさに何かが起こりそうな緊迫感に焦点が当たっているんです。
例えば、国際関係が悪化して戦争が始まりそうな状況や、交渉が決裂しそうな場面などで使われますよね。時間的にもっと切迫した印象を与える表現だと言えるでしょう。
「両国の関係は一触即発の状態だ」のように使います。
風前の灯火
「風前の灯火(ふうぜんのともしび)」は、風の前の灯火のように、今にも消えそうで危ない状態を表す表現なんですね。
この言葉には、「危急存亡の秋」よりももっと弱々しく、儚い印象があるかもしれません。積極的に戦うというよりも、運命に翻弄されている感じがしますよね。
病気で命が危ない状態や、経営が立ち行かなくなって倒産寸前の会社などについて使われることが多いですね。
「彼の命は風前の灯火だ」「老舗の店も風前の灯火となった」のように使われます。
土壇場
「土壇場(どたんば)」は、最後の瞬間、ぎりぎりの場面を表す言葉ですね。
もともとは江戸時代の処刑場を指す言葉だったそうで、そこから「もう後がない状況」という意味で使われるようになったんです。
「危急存亡の秋」がやや格式張った表現であるのに対し、「土壇場」は口語的で日常会話でも使いやすい表現ですよね。
「土壇場で逆転勝利した」「土壇場になって計画が変更された」のように、スポーツやビジネスなど幅広い場面で使えます。
「対義語」は?
「危急存亡の秋」の対義語、つまり正反対の意味を持つ表現も見ていきましょう。危機的状況の反対は、安定や繁栄を表す言葉になりますよね。
泰平の世
「泰平の世(たいへいのよ)」は、戦争や争いがなく、世の中が平和で穏やかな状態を表す言葉ですね。
「危急存亡の秋」が生きるか死ぬかの瀬戸際を表すのに対し、「泰平の世」は何の心配もいらない安定した時代を意味しているんです。
江戸時代の長い平和な期間を指して「江戸泰平」と言ったりしますよね。戦乱の時代から平和な時代への移り変わりを語る際などに使われる表現なんですね。
「長い戦乱の後、ようやく泰平の世が訪れた」のように使います。
安泰
「安泰(あんたい)」は、安らかで穏やかな状態、心配事がない様子を表す言葉ですね。
「危急存亡の秋」が組織の存続が危ぶまれる状況なのに対し、「安泰」は組織の基盤がしっかりしていて、将来にわたって安心できる状態を意味しているんです。
ビジネスシーンでは「この契約が取れれば、当面は安泰だ」のように使われますよね。個人についても「彼の地位は安泰だ」のように使えるので、とても汎用性の高い言葉なんですね。
順風満帆
「順風満帆(じゅんぷうまんぱん)」は、追い風を受けて帆をいっぱいに張って進む船のように、物事が順調に進んでいる様子を表す四字熟語ですね。
「危急存亡の秋」が危機的状況を表すのに対し、「順風満帆」はすべてがうまくいっている絶好調な状態を意味しているんです。
単に安定しているだけでなく、勢いよく前進しているというポジティブなニュアンスが強い表現ですよね。成長期にある企業や、キャリアが順調な人について使われることが多いです。
「彼のビジネスは順風満帆だ」「プロジェクトは順風満帆に進んでいる」のように使います。
「英語」で言うと?
「危急存亡の秋」を英語でどう表現するか、気になりますよね。日本語独特の表現ですが、英語にも似たニュアンスを持つ言い回しがあるんですよ。
a critical moment(決定的な瞬間)
「critical moment」は、重大な局面、決定的な瞬間という意味の英語表現ですね。
「critical」という単語には「批判的な」という意味もありますが、ここでは「決定的に重要な」「危機的な」という意味で使われているんです。
「This is a critical moment for our company.(これは我が社にとって危急存亡の秋だ)」のように使えますよ。ビジネスや政治の場面でよく使われる表現なので、覚えておくと便利ですよね。
「critical time」「critical point」という言い方もできるので、状況に応じて使い分けるといいかもしれません。
a matter of life and death(生死に関わる問題)
「a matter of life and death」は、直訳すると「生と死の問題」という意味になりますね。
これは「存亡」という部分を英語で表現したものと言えるでしょう。「生きるか死ぬか」という極限的な状況を表す、とても強い表現なんですね。
「This decision is a matter of life and death for the organization.(この決断は組織の存亡に関わる)」のように使います。
日常会話でも、ちょっと大げさに「これって超重要なんだよ」と強調したい時に使われたりもしますよね。ただ、本当に深刻な状況で使う方が適切な表現だと言えるでしょう。
a make-or-break situation(成功か失敗かの状況)
「make-or-break situation」は、成功するか失敗するか、うまくいくかダメになるかの状況を表す英語表現なんですね。
「make」は「作る、成功させる」、「break」は「壊れる、失敗する」という意味ですから、まさに「生き残るか滅びるか」という二択の状況を表しているんです。
「We are facing a make-or-break situation.(私たちは危急存亡の秋に直面している)」のように使えますよ。
ビジネスの世界では「make-or-break year(正念場の年)」のような使い方もされますね。カジュアルな場面でも使いやすい表現かもしれません。
まとめ
ここまで「危急存亡の秋」について、意味から由来、使い方まで詳しく見てきましたね。最後にポイントを振り返ってみましょう。
「危急存亡の秋」は、組織や国家が生き残るか滅びるかの瀬戸際に立たされている重大な局面を表す言葉でしたね。約1800年前の中国、三国志の時代に諸葛孔明さんが書いた「出師の表」から生まれた表現なんです。
「秋」を「とき」と読むのは、秋が収穫の時期で一年で最も重要な時だったからでしたよね。この由来を知ると、言葉の深みがより感じられるのではないでしょうか。
使い方としては、会社の経営危機、国家的な課題、スポーツチームの存続危機など、組織や集団の重大な局面について使うのが一般的でした。個人の小さな問題に使うと大げさになってしまうので、注意が必要でしたね。
類語としては「存亡の機」「一触即発」「風前の灯火」などがあり、それぞれ微妙にニュアンスが違うことも学びましたよね。対義語は「泰平の世」「安泰」「順風満帆」など、平和で安定した状況を表す言葉でした。
英語では「critical moment」「a matter of life and death」「make-or-break situation」などで表現できることもわかりましたね。
この言葉は、格調高く重大な状況を表現できる便利な表現なんですね。ビジネスシーンやフォーマルな場面で使うと、説得力が増すかもしれません。ただし、本当に深刻な状況について使う言葉ですので、使いどころは見極めたいところですよね。
きっとこれからニュースやビジネス書で「危急存亡の秋」という言葉を見かけたとき、その意味の深さや歴史的背景まで理解できるようになっているはずですよ。機会があれば、ぜひ使ってみてくださいね。